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カジノドライヴ
通算成績11戦4勝
獲得賞金6,938万円
生年月日 2005.03.07(平成17年)毛色 栗毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 8 | OP被災地支援つばさ賞 | 東京 ダ1400 | 1人気 | 安藤勝己 | 1:23.9 | 上り37.2 | — | |
| 3 | OPアハルテケS | 東京 ダ1400 | 2人気 | 安藤勝己 | 1:24.3 | 上り36.2 | — | |
| 9 | OP仁川S | 阪神 ダ2000 | 2人気 | 藤田伸二 | 2:05.6 | 上り39.0 | — | |
| 8 | GIドバイワールドカップ | アラブ首長国連邦 ダ2000 | 安藤勝己 | — | 映像 | |||
| 2 | GIフェブラリーS | 東京 ダ1600 | 3人気 | 安藤勝己 | 1:34.6 | 上り35.6 | 映像 | |
| 1 | アレキサンドライトS | 中山 ダ1800 | 1人気 | 安藤勝己 | 1:49.9 | 上り35.3 | — | |
| 6 | GIジャパンカップダート | 阪神 ダ1800 | 3人気 | 安藤勝己 | 1:49.7 | 上り36.9 | 映像 | |
| 12 | GIBCクラシック | アメリカ ダ2000 | 4人気 | V.エスピノーザ | — | 映像 | ||
| 1 | 条件戦 | アメリカ ダ1700 | 1人気 | エスピノ | 1:42.1 | — | — | |
| 取 | GIベルモントS | アメリカ ダ2400 | プラード | — | — | |||
| 1 | GIIピーターパンS | アメリカ ダ1800 | 1人気 | K.デザーモ | 1:47.9 | — | — | |
| 1 | 3歳新馬 | 京都 ダ1800 | 1人気 | 武豊 | 1:54.4 | 上り37.2 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父Mineshaft | A.P. Indy | Seattle Slew |
| Weekend Surprise | ||
| Prospector's Delite | Mr. Prospector | |
| Up the Flagpole | ||
| 母Better Than Honour | Deputy Minister | Vice Regent |
| Mint Copy | ||
| Blush With Pride | Blushing Groom | |
| Best in Show |
旅程 — この馬の物語
2005年生まれの栗毛の牡馬。父Mineshaft、母Better Than Honour。主な勝ち鞍はピーターパンS。
一攫千金の旅 ― 名前と、母
2005年3月7日、ケンタッキー。シェルブラッドストックが生産した栗毛の牡馬は、やがて「あの一族の弟」と呼ばれることになる。 母ベターザンオナーは、アメリカの重賞ドモワゼルステークスを勝った牝馬である。ただ、この牝馬の名を残したのは繁殖に上がってからの仕事だった。2003年生まれのジャジルが2006年のベルモントステークスを勝ち、翌年生まれのラグズトゥリッチズが2007年の同じレースを勝つ。ラグズトゥリッチズの戴冠は1905年のタニヤ以来という牝馬によるベルモント制覇で、しかも直線でプリークネスステークス馬カーリンを競り落としてのものだった。翌2006年に生まれたマンオブアイアンも、のちにブリーダーズカップ・マラソンを勝つ。2003年から2006年まで、この牝馬は四年続けて重賞勝ち馬を産んだ。その三番目が、カジノドライヴである。 血の並びも念が入っていた。父マインシャフトは2003年のアメリカ年度代表馬で、その父エーピーインディは半姉ラグズトゥリッチズの父でもある。三代母ベストインショウは、のちに日本で牝馬三冠を勝つアーモンドアイの四代母でもあった。 2006年のキーンランド9月セール、95万ドル。多田信尊が落札し、馬は太平洋を渡って日本へ来た。与えられた名の意味は、一攫千金の旅。買った山本英俊は、その理由をこう語っている。「この血統の馬を日本で埋もれさせてはアメリカの競馬関係者やファンに失礼」[^1]。 旅の行き先は、最初から決まっていた。ニューヨーク、6月、1マイル半。アメリカ三冠の最終関門であり、兄と姉が二年続けて勝った舞台である。
出典:Number Web「口癖は『目先の一勝より、馬の一生』 世界が認めたトレーナー藤沢和雄70歳がカジノドライヴの米GI挑戦をあっさり諦めた理由」2022年2月19日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/852101 、閲覧日:2026年8月1日。
二秒三 ― 遅れてきた新馬
育成はファンタストクラブ。2007年の春、美浦の藤沢和雄厩舎に入った。夏のデビューが予定されていたが、6月の調教で背の青木芳之を振り払って放馬し、その拍子につまずいてフレグモーネを発症する。放牧に出され、順番が狂った。 年が明けて1月に帰厩しても、新馬戦は二度続けて除外された。そのたびに乗る予定の騎手が変わった。三度目の登録でようやくゲートに入ったのが、2008年2月23日の京都・ダート1800m。鞍上は武豊、単勝1.2倍。 2着に、2秒3。 たった一戦で、この馬の名は一気に知られた。管理するのは、目先の一勝より馬の一生を、と常々口にする男である。その厩舎に、遠征の相談が持ち込まれた。上の二頭が勝ったレースを、この馬でもう一度。オーナーの希望だった、と藤沢はのちに振り返っている。
五馬身と四分の三 ― ピーターパンステークス
4月14日、アメリカ遠征が正式に発表される。同じ厩舎・同じ馬主のシャンパンスコールとスパークキャンドルを帯同馬に連れ、三頭でアメリカへ渡った。 ベルモントステークスの出走権を取りにいくステップは、5月10日のピーターパンステークス(GII)。デビュー戦に続いて武豊が乗る予定だったが斤量の条件で叶わず、藤沢厩舎と馬主に縁のあるケント・デザーモに手綱が渡る。 1番人気。ゲートを出遅れながら早めに位置を回復すると、直線は一頭だけ別の生き物だった。デザーモはターフビジョンを見ながら早々に追うのをやめ、それでも2着に5馬身3/4差をつけて先頭でゴールに入る。日本で調教された馬がアメリカのダート重賞を勝ったのは、これが初めてだった。 「彼はスペシャルクラスだね」[^1] デザーモはそう言い、無敗でケンタッキーダービーを勝ったビッグブラウンに騎乗する予定を抱えたまま、プリークネスステークスが終わるまで鞍上を空けて待っていてほしいと藤沢に頼み込んだという。 5日後には、半姉ラグズトゥリッチズを所有していたデリック・スミスとマイケル・テイバーから、1500万ドル――約15億円のトレードの打診が届いていたことが明らかになる。95万ドルで買った馬に、十五倍を超える値がついた。山本英俊は、即座に断った。
出典:Number Web「口癖は『目先の一勝より、馬の一生』 世界が認めたトレーナー藤沢和雄70歳がカジノドライヴの米GI挑戦をあっさり諦めた理由」2022年2月19日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/852101?page=2 、閲覧日:2026年8月1日。
歓迎されない客
ピーターパンステークスの一週間後、プリークネスステークスをビッグブラウンが勝って二冠を達成する。デザーモの鞍は、そちらに固定された。1977年のシアトルスルー以来31年ぶりとなる無敗の三冠が、現実味を帯びていた。 そのシアトルスルーは、カジノドライヴの父マインシャフトの父エーピーインディの、父である。血の上では身内が立てた記録に、身内が待ったをかけにいく格好だった。 だがベルモントパークの空気は、そんな理屈で和らぎはしない。新しいアメリカン・ヒーローの誕生を待つ人々の前で、日本から来た弟は、偉業を邪魔しにきたヒールになった。 藤沢の手当ては具体的だった。厩舎に夜警を雇い、馬房前に掲げるネームプレートを帯同の二頭とシャッフルする。万一よからぬものを混ぜられることがあっても、この馬に当たる確率が少しでも下がるように。 競馬場側との一件もあった。ピーターパンステークスのパドックで尻っ跳ねをしたためスクーリングを課され、指示どおり済ませたのに、開催日のレースとレースの合間にもう一度やり直せという達しが来る。藤沢は首を縦に振らなかった。一度目に言わなかったのは主催者側の落ち度であると毅然と伝えたうえで、スタッフの話では一度目に苛立つ素振りを見せていた、だから開催日に連れて行くのは良くないと判断しただけだ、と説明している。 鞍上は5月18日にアメリカの騎手へ切り替えると発表され、5月29日、エドガー・プラードに決まった。
六月七日、早朝
前日、天候が崩れた。悪くなった馬場のせいか歩様が乱れ、6月6日、後肢の挫石と診断される。症状は軽かった。陣営は出否の判断をレース当日まで持ち越し、治療を続けた。 そして当日の早朝、藤沢は報道陣の前に立った。 「この1戦で競走生活が終わるわけではなく、将来のある馬なので今回は挑戦を断念する事にしました」[^1] 発走まで、およそ7時間。四月末に海を渡ってから、四十日ほどが過ぎていた。 第140回ベルモントステークスは、9万4476人が見つめるなか、人気薄のダターラが逃げ切った。蹄の不安が伝えられていたビッグブラウンは、途中で追うのをやめて最下位に終わっている。無敗の三冠も、一頭の牝馬から始まった三年連続のベルモント制覇も、この日ふたつながら消えた。 もっとも、片方は消えたのではない。走らなかったのだ。正確には、走らせなかった人がいた。
出典:Number Web「口癖は『目先の一勝より、馬の一生』 世界が認めたトレーナー藤沢和雄70歳がカジノドライヴの米GI挑戦をあっさり諦めた理由」2022年2月19日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/852101?page=3 、閲覧日:2026年8月1日。
Best Turned Out
帰国して放牧に出た馬は、秋にもう一度アメリカへ渡る。目標はブリーダーズカップ・クラシック。ぶっつけでは出走させたくないという日本側の要望に、競馬場側が番組になかったレースを急遽組んで応えた。10月12日、サンタアニタの一般競走をビクター・エスピノーザで勝つ。 中1週で臨んだ10月25日のブリーダーズカップ・クラシックは、当時のサンタアニタに敷かれていた人工馬場で行われた。好スタートからハナに立ったものの、最終コーナーから徐々に後退し、12頭立ての最下位。勝ったのはイギリスから来たレイヴンズパスで、1番人気の年度代表馬カーリンも4着に沈んでいる。 その日、カジノドライヴは出走馬のなかで最も手入れが行き届いているとしてBest Turned Out賞を受けた。藤沢の返事は素っ気ない。 「そんなものより勝利という結果を残さないとダメだったね」[^1] 2005年、ヨークのインターナショナルステークスで2着に敗れたゼンノロブロイのときと、同じ言葉だった。 ちなみにこの年の11月、母ベターザンオナーはケンタッキーのセールで1400万ドルという繁殖牝馬の世界最高価格で取引されている。血の値段は、上がり続けていた。
出典:Number Web「口癖は『目先の一勝より、馬の一生』 世界が認めたトレーナー藤沢和雄70歳がカジノドライヴの米GI挑戦をあっさり諦めた理由」2022年2月19日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/852101?page=3 、閲覧日:2026年8月1日。
条件馬のまま、GIへ
帰国後は阪神競馬場での着地検査を利用し、ジャパンカップダートに登録した。アメリカの重賞勝ち馬でありながら、中央競馬での格付けは1600万下の条件馬。登録した日本馬38頭の賞金順では最下位である。それでも、この年から設けられたレーティング上位5頭への優先出走権に、113ポンドで滑り込んだ。鞍上は安藤勝己に替わった。 ヴァーミリアン、サクセスブロッケンに次ぐ3番人気。道中は好位で楽な手応え、そのまま直線を向いた。そこから伸びず、6着。 年が明けて1月24日、中山のアレキサンドライトステークスを勝ち、ようやくオープン馬になる。日本での2勝目は、新馬戦以来だった。 2月22日、東京のフェブラリーステークス。ドバイワールドカップへ直行する予定だったが、ダイワスカーレットの引退とロールオブザダイスの回避で出走枠が空き、急に組み込まれた一戦である。安藤勝己は本来ダイワスカーレットに乗るはずで、一度はミルコ・デムーロに依頼が回っていた。ダイワスカーレットの回避で、コンビはそのまま続いた。 直線、手応え良く先頭へ躍り出る。そこへ外からサクセスブロッケンが並びかけ、交わされた。2着。日本のGIで先頭のままゴール板を過ぎることは、ついに一度もなかった。 3月28日、ナドアルシバのドバイワールドカップは8着。勝ったウェルアームドからは4秒以上離されていた。帰国してすぐ、左前脚に重い屈腱炎が見つかる。5月1日、常磐支所で幹細胞移植の手術を受けた。
二年後のゲート、そして砂を継ぐ仔
復帰までに1年11か月かかった。2011年3月6日、仁川ステークス。6歳になった馬は藤田伸二を背に、絶好の手応えで2番手を追走し、直線入口で先頭に立つ。そこから失速して9着。二年ぶりのレースで、この馬はまだ先頭に立とうとしていた。 5月1日のアハルテケステークスは安藤勝己に戻り、逃げるトーホウオルビスに馬なりのまま並びかけて見せ場を作ったが、後方から来たブライトアイザックにかわされて3着。そして5月29日、震災の年の東京開催で「被災地支援」の冠がついたつばさ賞に1番人気で出走し、8着。これが最後の一戦になった。7月7日に登録を抹消され、社台スタリオンステーションで種牡馬になる。 産駒は地方競馬を主戦場にした。ヴェンジェンスが2019年のみやこステークス、メイショウカズサが2021年のプロキオンステークスを勝ち、カジノフォンテンは2021年に川崎記念とかしわ記念というふたつのJpnIを制して、自身も種牡馬になった。父が一度も手にできなかった最高格のタイトルを、仔が地方の重い砂で掴んだことになる。 その父は、もういない。2019年8月5日、14歳で死んでいた。判明したのは翌2020年3月、ジャパン・スタッドブック・インターナショナルが前年に供用を停止した種牡馬の一覧を公表したときである。訃報は半年以上遅れて、静かに届いた。 一攫千金の旅、という名前だった。千金は、掴めなかった。掴みにいったその朝に、掴ませなかった人がいる。あの朝、ベルモントパークで鞍を置かれなかった馬は、代わりに、そこから十一年を生きた。
産駒 — 旅を継ぐ馬
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