名馬の記憶を、再生する。

RACE & RETIREMENT FILM ARCHIVE

YouTubeに散らばる名レースの記録と、北海道で余生を送る引退馬たちの映像を、ひとつの蹄跡(ていせき)として結び直すアーカイブ。

レースの三分間だけが、馬の一生ではない。ゴール板の先に続く時間まで、辿れるように。

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コントレイルのイメージビジュアル
コントレイルContrail
Contrail

コントレイル

通算成績11戦8勝

獲得賞金119,529万円

生年月日 2017.04.01(平成29年)毛色 青鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
コントレイルの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIジャパンカップ 東京 芝2400 1人気 福永祐一 2:24.7 上り33.7映像
2 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 福永祐一 1:58.0 上り33.0映像
3 GI大阪杯 阪神 芝2000 1人気 福永祐一 2:02.5 上り37.4映像
2 GIジャパンカップ 東京 芝2400 2人気 福永祐一 2:23.2 上り34.3映像
1 GI菊花賞 京都 芝3000 1人気 福永祐一 3:05.5 上り35.2映像
1 GII神戸新聞杯 中京 芝2200 1人気 福永祐一 2:12.5 上り35.6映像
1 GI東京優駿(日本ダービー) 東京 芝2400 1人気 福永祐一 2:24.1 上り34.0映像
1 GI皐月賞 中山 芝2000 1人気 福永祐一 2:00.7 上り34.9映像
1 GIホープフルステークス 中山 芝2000 1人気 福永祐一 2:01.4 上り35.8映像
1 GIII東京スポーツ杯2歳ステークス 東京 芝1800 1人気 R.ムーア 1:44.5R 上り33.1映像
1 新馬 阪神 芝1800 1人気 福永祐一 1:48.9 上り33.5

血統

金色の名は蹄跡に掲載 — その馬のページへ
コントレイルの血統表(左から親・祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
ロードクロサイトRhodochrositeアンブライドルズソングUnbridled's Song
フォークロアFolklore

引退後の暮らし

社台スタリオンステーション

引退後の映像は未登録です。社台スタリオンステーション(安平町)の様子は牧場地図で見る

STORY

蹄跡 — この馬の物語

父ディープインパクトと並ぶ史上初の父子無敗クラシック三冠。コロナ禍の空に描いた、一条の飛行機雲。

飛行機雲という名前

Contrail――航空機が高空に曳く一条の白い軌跡。空へまっすぐ伸びていくその飛行機雲を、無敗のクラシックロードに重ねた命名だった。2017年4月1日、北海道・新冠町のノースヒルズ生まれ。母ロードクロサイトはアメリカ産の良血だが現役は未勝利。生後まもない本馬を検分した矢作芳人は「兄や姉とはタイプが異なり、『ディープを付けるとこんな馬ができるんだ』と思った」「ディープにそっくりだと思った」と振り返る。当初、大きな期待を寄せる声は多くなかった。地味な始まりだった。だが、空に伸びる雲はいつも、低い地上から立ちのぼる。

半年、地上で待った

両前脚の球節に不安が出て、1歳の終わりから2歳前半という最も大事な半年間、コントレイルは人を乗せる調教を休まざるを得なかった。それでも乗り出すとすぐ同級生に追いついた。矢作は栗東入厩の打診に「ウソでしょ?」と漏らし、「ゲート試験に受かったら、もう一度牧場に戻すことになるんだろうな」とすら思っていたという。脚元への慎重さは、生涯ついて回る。完成された怪物ではなく、いつも脚元を窺いながら一歩ずつ高度を上げていく馬――それがコントレイルの正体だった。

衝撃の二戦目

2019年9月15日、阪神の新馬戦をあっさり勝つと、続く東京スポーツ杯2歳ステークス(GIII)で世界が震えた。福永が別馬に騎乗予定だったためライアン・ムーアが手綱を取る。直線一気に加速して2着アルジャンナに5馬身差、タイムは1分44秒5。従来の芝1800m2歳JRAレコードを1秒1も更新するスーパーレコードだった。ムーアは「強かった。こんなトップクラスの馬に乗れてうれしい」、矢作は「ここまでとは思わなかった。膝の震えがしばらく止まらなかった」と語った。地上で待った馬が、ついに空を見上げた瞬間だった。

無敗の三冠

2019年暮れのホープフルSでGIを勝つと、2020年は前哨戦を使わず直接クラシックへ。皐月賞でサリオスを半馬身抑え、ダービーでも同馬を3馬身突き放して父以来15年ぶり、史上7頭目の無敗二冠。神戸新聞杯を叩いて臨んだ菊花賞では、芝3000mの長丁場でアリストテレスの執拗な競りかけを受けながらクビ差で凌ぎ切った。福永は後年「抜かされそうでも抜かせなかった。初めて勝負根性というのを見たレースでした」と振り返る。シンボリルドルフ、父ディープインパクトに次ぐ無敗三冠、そして世界初の父子無敗三冠。無観客のコロナ禍にあって、空の名前を持つ馬が、空に応えた。

三冠馬3頭、世紀の対決

2020年ジャパンカップ。2歳上の女帝アーモンドアイ、同期の無敗三冠牝馬デアリングタクト、そしてコントレイル――史上初めて三冠馬3頭が同一GIに集った。8戦無敗で臨んだコントレイルは、しかしアーモンドアイの牙城を崩せず2着。キャリア初黒星であり、無敗三冠馬が連を外した史上初の事例となった。完璧だった軌跡に、初めて翳りが差した。

勝てない四歳、募る雑音

2021年、コントレイルは勝ち星から見放される。大阪杯は当日の大雨で実質不良の馬場に脚を奪われ3着。秋初戦の天皇賞(秋)は鋭く伸びたものの、一つ下の皐月賞馬エフフォーリアにクビ差届かず2着。宝塚記念は脚部不安もあって回避し、世間の風当たりは強まった。「最弱の三冠馬」とまで言われた。だが矢作は「ベストは左回りのワンターン」と適条件を見据えていた。雲は一度かき消えても、風向き次第でまた描かれる。

有終の美、空の彼方の軌跡

2021年11月28日、東京競馬場、引退レースのジャパンカップ。スローからキセキが大きく抜け出す展開を、福永はじっと待った。直線、ゴーサインに応えてコントレイルは豪快に伸び、先に抜け出したオーソリティを並ぶ間もなくかわして先頭でゴール。勝ちタイム2分24秒7、上がり3ハロン33秒7はメンバー最速だった。その年初めての勝ち鞍であり、三冠後に勝てなかった唯一の三冠馬になってはいけないという重圧を、最後の最後で振り払った勝利だった。福永は涙を流しながら「今までの2年2カ月は夢のような時間でした。ジョッキー人生のすべてをあの馬に注ぎ込みましたし、それに応えてくれました」と語った。引退式で矢作は馬上から「初めて乗ったが、空を飛んでいるようだった」と声を詰まらせた。フジテレビ・倉田大誠アナの「空の彼方に最後の軌跡! コントレイル!」という実況が、その日の空に残った。

種牡馬としての現在地、そしてこれから

2022年、コントレイルは父ディープインパクトと同じ社台スタリオンステーションで種牡馬入り。初年度の種付料は父の初年度と同額の1200万円。初年度産駒(2023年産)は2025年にデビューし、その年のJRAファーストシーズンサイアー(新種牡馬)首位を獲得した。2026年4月にはゴーイントゥスカイが青葉賞(GII)を制し、コントレイル産駒の重賞初制覇を達成。さらにコンジェスタスが京都新聞杯を制し、ダービーに2頭の産駒を送り込んだ。産駒は「2歳から完成する怪物型」ではなく距離延長で本領を発揮し3歳春に伸びるタイプ――父譲りの「じっくり高度を上げる」血である。2026年度の種付料は1800万円まで上昇した。亡き父ディープインパクトの最良の後継として、空に描く新たな軌跡は、まだ始まったばかりだ。

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