名馬の記憶を、再生する。

RACE & RETIREMENT FILM ARCHIVE

YouTubeに散らばる名レースの記録と、北海道で余生を送る引退馬たちの映像を、ひとつの蹄跡(ていせき)として結び直すアーカイブ。

レースの三分間だけが、馬の一生ではない。ゴール板の先に続く時間まで、辿れるように。

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この世代(生まれ年)

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クロワデュノールのイメージビジュアル
クロワデュノールCroix du Nord
Croix du Nord

クロワデュノール

通算成績11戦7勝

獲得賞金133,984万円

生年月日 2022.03.21(令和4年)毛色 青鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
クロワデュノールの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
2 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 北村友一 2:12.2 上り35.2映像
1 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 1人気 北村友一 3:13.7 上り34.9映像
1 GI大阪杯 阪神 芝2000 1人気 北村友一 1:57.6 上り34.9映像
4 GIジャパンカップ 東京 芝2400 2人気 北村友一 2:20.9 上り34.4映像
14 GI凱旋門賞 パリロンシャン 芝2400 3人気 北村友一 映像
1 GIIIプランスドランジュ賞 パリロンシャン 芝2000 1人気 北村友一 2:11.69 映像
1 GI東京優駿(日本ダービー) 東京 芝2400 1人気 北村友一 2:23.7 上り34.2映像
2 GI皐月賞 中山 芝2000 1人気 北村友一 1:57.3 上り34.7映像
1 GIホープフルステークス 中山 芝2000 1人気 北村友一 2:00.5 上り34.9映像
1 GII東京スポーツ杯2歳ステークス 東京 芝1800 1人気 北村友一 1:46.8 上り33.3映像
1 新馬 東京 芝1800 3人気 北村友一 1:46.7R 上り33.8

血統

金色の名は蹄跡に掲載 — その馬のページへ
クロワデュノールの血統表(左から親・祖父母)
キタサンブラックKitasan BlackブラックタイドBlack Tide
シュガーハートSugar Heart
ライジングクロスRising CrossケープクロスCape Cross
ウッドライジングWoodrising
STORY

蹄跡 — この馬の物語

北十字星を名に負い、父キタサンブラックが届かなかった盾を仔が獲った、世代の旗手。

北十字星という名

父はキタサン“ブラック”、母はライジング“クロス”。二つの名を掛け合わせ、夜空に十字を描く星座――北十字星(クロワデュノール、フランス語で「北の十字」)へと昇華させた。父キタサンブラックは国民的歌手・北島三郎が愛した「みんなの愛馬」。その血を継ぐ仔が、フランス語の星の名を背負って2022年3月21日、ノーザンファーム(北海道安平町)に生まれ落ちた。母ライジングクロスは英オークス2着の英国牝馬で、本馬はその第10仔。ベテラン繁殖が産んだ晩成の良血は、デビュー前から「操縦性が高く、人の指示を待てる賢さ」を備えていたと、育成を担ったノーザンファーム空港の佐々木淳吏厩舎長は振り返っている。

伝説の新馬戦

2024年6月9日、東京芝1800m。3番人気で迎えたデビュー戦で、クロワデュノールは1分46秒7という東京芝1800m・2歳新馬戦のレコードを叩き出す。後半5ハロン57秒3は、皐月賞馬ジオグリフに並ぶ衝撃の数字だった。続く東京スポーツ杯2歳ステークス(GII)を上がり33.3秒で快勝し重賞初制覇。年末のホープフルステークス(GI)では、単勝オッズ1.8倍の断然人気に応え、2着ジョバンニに2馬身差をつけて完勝(勝ちタイム2:00.5)。無傷の3連勝で、鞍上・北村友一に落馬重傷からの復帰後4年ぶりとなるGI勝利をもたらした。北村は「またGIを勝つことができました。本当にたくさんの方々に助けていただきました」と涙を見せた。

最優秀2歳牡馬

2024年度JRA賞・最優秀2歳牡馬に、256票中249票(次点アドマイヤズームは7票)という圧倒的支持で選出。JPNサラブレッドランキング2歳部門でもホープフルS勝利を対象に117ポンドの最高評価を受け、世代トップに格付けされた。年度代表馬はドウデュースに譲ったが、世代の頂点はすでにこの馬のものだった。サンデーレーシングの吉田俊介代表は「現時点で文句のつけようがない馬」と評した。

皐月賞の蹉跌

2025年4月、無敗のまま皐月賞へ直行。単勝1.5倍の1番人気に推されたが、向こう正面で他馬に包まれて窮屈になり、早めに動かざるを得なくなった。後半が地獄のロングスパート戦と化す中、残り100mで先頭に立つも、外からジョアン・モレイラのミュージアムマイルに差し切られ1.1/2馬身差の2着。無敗での三冠への道は初戦で断たれた。それでも極端な後方有利の展開で2着を死守した内容に、北村は「不利があってもリカバリーして走ってくれた。すごい馬」と能力を讃えた。

ダービー奪還

2025年6月1日、東京優駿。雨上がりの良馬場で、クロワデュノールは好位3番手から残り300mで先頭に立ち、マスカレードボールの追撃を脅威の粘り腰で封じて3/4馬身差で押し切った。皐月賞の雪辱を果たし、第92代ダービー馬に。父キタサンブラックが現役時に届かなかったダービーの栄冠を、仔が捧げた瞬間だった。騎手人生20年目、3度目の挑戦でダービージョッキーとなった北村は「自分がダービージョッキーになった実感はなくて、クロワデュノールがダービー馬になれたことが本当に何よりうれしいです」と、勝利を馬に譲るように語った。

ロンシャンの夢と挫折

世代王者は秋、日本競馬の悲願・凱旋門賞へと海を渡る。前哨戦プランスドランジュ賞(仏GIII)を重馬場で制し、北村ともども欧州初勝利・海外重賞初制覇を飾った。だが本番の凱旋門賞は実質最外の17番枠、500kg超の馬体に重馬場という三重の逆風。早めに先頭へ立つも道中の力みが響き、14着とキャリア初の二桁着順に沈んだ。勝ったのは前哨戦で破った10番人気の伏兵ダリズ。リベンジを許す皮肉な結末だった。帰国後のジャパンカップでも、世界レコードで圧勝したカランダガンの前に4着に敗れ、2025年シーズンを苦い余韻で終えた。

春古馬の主役へ

2026年、4歳になったクロワデュノールは古馬戦線の主役を宣言する。大阪杯(GI)では大外枠から中団を進み、58秒1のタフなペースで逃げ粘るメイショウタバルをゴール前で差し切って3/4馬身差。GI3勝目を挙げた。北村は「自分のなかでは今年はクロワデュノールが主役だと思っています」と力を込めた。続く天皇賞(春)は未知の3200m。直線早めに抜け出すも、12番人気ヴェルテンベルクの強襲を受け、写真判定の末に推定2cm差のハナ差で勝利。GI4勝目を飾り、ダービー馬の春の盾制覇は2007年メイショウサムソン以来19年ぶりだった。奇しくも父キタサンブラックも初の春天をハナ差で制しており、父子は同じ劇的勝利で結ばれた。

恵みの雨と春古馬三冠の壁

2026年6月14日、宝塚記念。大阪杯・天皇賞春に続く「春古馬三冠」完全制覇がかかり、前日時点で単勝1.1〜1.2倍、支持率64.0%という、単勝オッズが複勝オッズを下回るほどの異例の支持を集めた。だが発走直前、阪神に突然の豪雨。馬場は良から一気に重へと悪化した。道悪を得意とするメイショウタバルにとっては、亡きオーナーが降らせたかのような恵みの雨。2番手から抜け出した武豊のメイショウタバルを、クロワデュノールは好位から坂で懸命に詰め寄ったが、クビ差及ばず2着。国内の道悪を初めて経験しての1番人気2着は、それでもなお世代最強の地力を示すものだった。北十字星の物語は、まだ途上にある。

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