名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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カレンブーケドールのイメージビジュアル
カレンブーケドールCurren Bouquetd'or
Curren Bouquetd'or

カレンブーケドール

通算成績17戦2勝

獲得賞金45,805万円

生年月日 2016.04.23(平成28年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
カレンブーケドールの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
12 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 4人気 戸崎圭太 1:59.2 上り34.7映像
4 GI宝塚記念 阪神 芝2200 3人気 戸崎圭太 2:11.7 上り35.2映像
3 GI天皇賞(春) 阪神 芝3200 4人気 戸崎圭太 3:15.2 上り37.7映像
2 GII日経賞 中山 芝2500 1人気 松山弘平 2:33.4 上り34.5映像
5 GI有馬記念 中山 芝2500 3人気 池添謙一 2:35.6 上り36.8映像
4 GIジャパンカップ 東京 芝2400 5人気 津村明秀 2:23.2 上り34.8映像
2 GII産経賞オールカマー 中山 芝2200 2人気 津村明秀 2:15.5 上り35.1映像
2 GII京都記念 京都 芝2200 2人気 津村明秀 2:16.8 上り35.9映像
2 GIジャパンカップ 東京 芝2400 5人気 津村明秀 2:26.0 上り36.9映像
2 GI秋華賞 京都 芝2000 2人気 津村明秀 2:00.2 上り36.2映像
3 GIII紫苑S 中山 芝2000 1人気 津村明秀 1:58.4 上り34.0
2 GI優駿牝馬 東京 芝2400 12人気 津村明秀 2:22.8 上り35.1映像
1 LスイートピーS 東京 芝1800 2人気 津村明秀 1:47.7 上り33.1
4 GIIIデイリー杯クイーンカップ 東京 芝1600 4人気 戸崎圭太 1:34.4 上り33.6映像
1 2歳未勝利 中山 芝1600 1人気 O.マーフィー 1:35.5 上り35.1
3 2歳未勝利 東京 芝1800 1人気 北村宏司 1:50.4 上り34.3
2 2歳新馬 東京 芝1600 3人気 北村宏司 1:37.5 上り33.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
カレンブーケドールの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
ソラリアSolariaScat DaddyヨハネスブルグJohannesburg
Love Style
So LindaSeeker's Reward
So Posh
STORY

旅程 — この馬の物語

2016年生まれの鹿毛の牝馬。父ディープインパクト、母ソラリア。

黄金の花束という名

2016年4月23日、北海道千歳市の社台ファーム。父はディープインパクト、母はソラリアという黒鹿毛だった。 ソラリアはチリの馬である。あちらでエルダービー、チリ1000ギニー、アルトゥーロ・L・ペーニャ賞——南米のGIを三つ勝った牝馬が海を渡り、日本の牧場でこの鹿毛の娘を産んだ。母の父はScat Daddy、母の側にはMr.Prospectorの4×5が畳まれている。半兄にキャンディライド産駒のガーデンテラス、翌年には同じディープインパクトとの間に半妹エヴァーマノが生まれた。 名は、馬主・鈴木隆司の冠名「カレン」に、フランス語のbouquet d'or——黄金の花束を継いだものだった。登録された馬名の意味には、こう添えられている。勝利の大輪を咲かせてほしい、と。 その一文が、これから五年、この牝馬の背中に載り続ける。

アタマ差の出発

2018年10月8日、東京の芝1600m。3番人気で迎えた新馬戦で、カレンブーケドールは出走馬中最速となる上がり3ハロン33秒0を使った。ゴール前でぐんぐん詰め寄り、それでも3番手から抜け出したダノンキングリーをアタマ差だけ捉えきれずに2着。届きそうで届かない——のちに何度も繰り返される競馬の輪郭が、最初の一戦ですでにできあがっていた。 2戦目は東京の1800mで1番人気に推されながら、不利もあって3着。3戦目、中山のマイルでオイシン・マーフィーを鞍上に迎え、ようやく初勝利を挙げる。 明けて2019年、戸崎圭太とのコンビでクイーンカップへ。勝ったのは同期の牝馬クロノジェネシスで、カレンブーケドールは0秒2差の4着に終わった。賞金を積めず桜花賞は見送り、4月末のスイートピーステークスへ矛先を変える。この日はじめて手綱を取ったのが、美浦の津村明秀だった。二人はクビ差で凌いで勝ち上がり、オークスへの切符を手にした。

府中のクビ差

2019年5月19日、優駿牝馬。単勝94.1倍、12番人気だった。 好位から進出したカレンブーケドールは、府中の長い直線で先頭に立つ。外からラヴズオンリーユーが一完歩ずつ差を詰め、残り100mで並びかけ、半馬身ほど前に出た。そこから内でもう一度伸びた。ゴール板を過ぎたとき、差はクビひとつ。勝ち時計2分22秒8はレースレコードだった。 「直線が長かった」[^1]。津村のその一言に、この日の全部が入っている。数完歩早く抜け出していれば、直線が数メートル短ければ。 2番人気のクロノジェネシスは3着。生涯で六度顔を合わせることになる同期の女王に、カレンブーケドールが先着したのは、この日が最初で最後になる。

出典:サンケイスポーツ「【オークス】12番人気カレンブーケドール悔し2着も大健闘 津村『直線が長かった』」2019年5月19日配信、https://race.sanspo.com/keiba/news/20190519/pog19051919270010-n1.html、閲覧日:2026年7月24日。

銀が三つ

秋初戦の紫苑ステークスは1番人気。直線でいったん先頭に立ちながら差し返され、3着に終わった。 10月13日、稍重の京都で秋華賞。2番人気で中団の内を進み、そこから伸びたが、クロノジェネシスに2馬身届かない。 そして11月24日、ジャパンカップ。牝馬はこの馬一頭きり、重賞のタイトルはまだ一つも無い。それでも5番人気に支持された。1枠1番から好位の内を確保し、直線で抜け出しを図る。だが最内を突いたスワーヴリチャードが伸び、3/4馬身が最後まで縮まらなかった。GIで三度続けての2着である。 レース後、国枝栄は言った。「文句なしの競馬でした。また来年です」[^1]。負けを噛み殺した言葉ではない。来年がある者の言葉だった。

出典:ラジオNIKKEI「【ジャパンC】(東京)〜スワーヴリチャードがGI・2勝目 [News]」2019年11月24日配信、https://www.radionikkei.jp/keiba_article/news/post_19419.html、閲覧日:2026年7月24日。

渡れなかった海

4歳初戦の京都記念は重馬場。道中は後方から脚を伸ばしたが、またクロノジェネシスの2着だった。 次の目標はドバイシーマクラシック。カレンブーケドールは現地入りまで果たしたものの、新型コロナウイルスの感染拡大で開催が中止となり、一度も走らないまま日本へ戻る。休養は長引き、次に競馬場へ帰ってきたのは7か月後、9月のオールカマーだった。好位から早めに抜け出し、今度こそと見えたところをセンテリュオにハナ差交わされる。四戦続けての2着。 11月のジャパンカップは、アーモンドアイコントレイルデアリングタクトという三頭の三冠馬が同じゲートに入った年だった。5番人気のカレンブーケドールは、その三頭に続く4着に入っている。 暮れの有馬記念は池添謙一に手綱が渡った。中団から早めに動いて5着。「勝ち馬の手応えが違いすぎた」[^1]と池添は脱帽している。勝ったのは、またしてもクロノジェネシスだった。 デビューからここまで13戦、この馬はまだ一度も掲示板を外していない。

出典:中日スポーツ「【有馬記念】代打男・池添謙一の執念は実らず…カレンブーケドールは5着同着『勝ち馬の手応えが違いすぎた』と脱帽」2020年12月27日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/177437、閲覧日:2026年7月24日。

三千二百メートルの三着

2021年3月、日経賞。松山弘平を背に1番人気で好位から内を突き、メンバー最速の上がり34秒5でウインマリリンに詰め寄ったが、半馬身だけ残された。 5月2日、天皇賞・春。この年の舞台は阪神の芝3200mで、鞍上は戸崎圭太に替わっていた。牝馬がこの盾を掲げたのは1953年のレダまで遡り、68年ぶりの快挙がかかっていた。距離は未知、阪神の芝も初めて。それでもカレンブーケドールは3着に粘り、出走した3頭の牝馬の中で最も先にゴールしている。 6月の宝塚記念は、クロノジェネシスレイパパレに次ぐ3番人気。中団から進めたが前との差は詰まらず、0秒8差の4着。同期の女王との六度目が、最後の対戦になった。 10月31日、天皇賞・秋。好位を追走しながら直線で伸びを欠き、12着。デビューから17戦目にして、初めて掲示板の外に名前があった。

花束のゆくえ

次はジャパンカップ、と決まっていた。だが左前脚に繋靭帯炎が出て回避。年明けのアメリカジョッキークラブカップでの復帰を目指していたものの、放牧先で靭帯の状態が思ったより悪いと分かり、11月30日に引退が発表された。 17戦2勝、獲得賞金4億5805万7000円。重賞で2着が六度、3着が二度。ついに重賞のタイトルを一つも持てず、世間はシルバーコレクターと呼んだ。けれど成績表を上から下へ辿れば、前を行った馬の名がどれも重い。ダノンキングリークロノジェネシスラヴズオンリーユースワーヴリチャード、センテリュオ、ウインマリリン、ワールドプレミア。この牝馬は届かなかったのではなく、いつも届く場所にいた。 生まれ故郷の社台ファームで、彼女は繁殖牝馬になった。初仔はエピファネイアとの間のハムタン、2番仔はブリックスアンドモルタルとの間の牝馬サンリットブーケ——母の名の後半を受け継いだ娘である。国枝栄は、産駒でGIを、と願った。 津村明秀のことも書いておきたい。この牝馬で三度GIの2着に立った男は、2024年5月12日、テンハッピーローズでヴィクトリアマイルを勝つ。デビュー21年目、GI挑戦48度目の初制覇だった。あのクビ差の直線を、今度は先頭で駆け抜けたのである。 勝利の大輪は、この馬自身の頭上では咲かなかった。それでも花束はほどけていない。千歳の牧草地で仔を連れて歩く鹿毛の牝馬が、一輪ずつ、まだ手の中に持っている。

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