名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年) —

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名馬録
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フロムダスクFrom Dusk
From Dusk

フロムダスク

通算成績28戦3勝

獲得賞金1億752万円

生年月日 2020.04.14(令和2年)毛色 黒鹿毛性 牡

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
フロムダスクの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
17 LオパールS 京都 芝1200 8人気 中井裕二 1:07.7 上り34.4
1 GIIICBC賞 中京 芝1200 12人気 中井裕二 1:06.5 上り33.6
5 OP鞍馬S 京都 芝1200 8人気 松若風馬 1:06.9 上り32.5
10 L六甲S 阪神 芝1600 11人気 菱田裕二 1:32.9 上り34.9
14 L東風S 中山 芝1600 10人気 笹川翼 1:33.0 上り34.2
1 清水S 京都 芝1600 11人気 西村淳也 1:33.0 上り34.3
16 長岡S 新潟 芝1600 16人気 江田照男 1:34.1 上り34.1
6 あけぼのS 中山 芝1600 8人気 松岡正海 1:33.1 上り35.1
2 若潮S 中山 芝1600 9人気 戸崎圭太 1:33.4 上り34.6
11 カウントダウンS 京都 芝1200 10人気 荻野極 1:09.5 上り34.1
7 南総S 中山 芝1200 13人気 岩田康誠 1:07.8 上り32.8
16 キセキC 京都 芝1600 14人気 横山和生 1:35.5 上り34.3
13 長篠S 中京 芝1200 10人気 永島まなみ 1:11.7 上り34.8
12 佐世保S 小倉 芝1200 7人気 永島まなみ 1:10.2 上り34.8
5 多摩川S 東京 芝1400 7人気 菅原明良 1:20.7 上り33.7
4 フリーウェイS 東京 芝1400 4人気 武豊 1:21.2 上り33.3
4 戎橋S 阪神 芝1400 12人気 岩田康誠 1:20.9 上り33.9
17 巌流島S 小倉 芝1200 11人気 藤岡佑介 1:10.7 上り36.2
17 醍醐S 京都 芝1200 9人気 横山和生 1:08.6 上り34.7
16 道頓堀S 阪神 芝1200 4人気 武豊 1:09.7 上り33.5
4 セプテンバーS 中山 芝1200 3人気 菅原明良 1:08.0 上り34.5
17 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 17人気 横山和生 1:38.0 上り39.6
9 GIIIサウジダービー KAA ダ1600 3人気 川田将雅 1:41.15 —
3 LクロッカスS 東京 芝1400 1人気 武豊 1:21.5 上り34.2
16 GI朝日杯フューチュリティステークス 阪神 芝1600 13人気 武豊 1:35.6 上り36.3
2 GII京王杯2歳S 東京 芝1400 11人気 戸崎圭太 1:21.1 上り34.7
10 OPカンナS 中山 芝1200 2人気 松岡正海 1:10.8 上り36.1
1 2歳新馬 小倉 芝1200 1人気 松山弘平 1:10.1 上り34.7

血統

金色の名は掲載馬 — その馬のページへ/点線の名は押すと一言解説
フロムダスクの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
Cappucino Bay
Globe Trot
Trip
Foolish GalKiri's Clown
Galaxy North
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの黒鹿毛の牡馬。父Bolt d'Oro(英語版)、母Foolish Cause。主な勝ち鞍はCBC賞。

夕暮れから、と名付けられた

2020年4月14日、アメリカ・ケンタッキー州のスプリングハウスファームに黒鹿毛の牡馬が生まれた。父ボルトドーロは2017年にデルマーフューチュリティとフロントランナーステークス、米GIを二つ勝った快速馬で、翌年のケンタッキーダービーでは有力視されながら12着に沈んでいる。母フーリッシュコーズの半兄ゲットストーミーは、メーカーズマークマイルなど芝の米GIを三つ勝ち、重賞を七つ集めた一流馬だった。2歳でステークスを勝った半姉フーリッシュヒューモアもいる。走る血の家である。 この仔は二度、競りにかけられた。2021年秋のキーンランドセプテンバーセールで20万ドル。そして翌2022年3月、フロリダの2歳トレーニングセール、OBSマーチセール。ここで1ハロンを10秒を切る時計で駆け、値は90万ドル、およそ1億620万円まで跳ね上がった。落札したのは栗東の森秀行。買い主は、馬主になったばかりの藤田晋だった。 藤田がこの道に入ったのは、その前の年である。2021年2月、武豊と食事をする席に、森が馬主申請書を持ってきた。翌3月には森の薦めでアメリカのトレーニングセールから2歳馬を4頭買い、その一頭ジャングロが翌年のニュージーランドトロフィーで最初の重賞をもたらす。海の向こうで走る前の2歳を選び、日本へ連れてくる。この買い方の二年目に、この仔は加わった。 馬名の意味は「夕方から」。同じセールで一緒に買われた仔が「ティルドーン(夜明けまで)」と名付けられ、二頭で「フロム・ダスク・ティル・ドーン」という一つの言い回しになる仕掛けだった。夕暮れからの半分だけを背負って、フロムダスクは太平洋を渡った。

小倉の雨、府中の逃げ

2022年9月3日、小倉。雨で重馬場になった芝1200メートルの新馬戦を、松山弘平を背に単勝1.9倍の1番人気で迎えた。好スタートから先手を取り、ヨウシタンレイとの追い比べを制して1分10秒1。コンマ1秒差で初勝利を挙げた。 三週間後のカンナステークスで、この馬のもう一つの顔が出る。松岡正海に乗り替わった中山の重馬場で大きく出遅れ、2番人気を裏切る10着。ゲートを出れば前に行けて、出られなければ何もできない。2歳の秋に、輪郭はもう見えていた。 11月5日、東京芝1400メートルの京王杯2歳ステークス。初めての重賞に戸崎圭太を迎え、18頭立ての11番人気だった。再び好スタートを切ると、迷わず先頭へ。3コーナーも4コーナーも先頭のまま直線に入り、粘りに粘って、ゴール前でオオバンブルマイに差された。1分21秒1、コンマ2秒差の2着。評価の低さをひっくり返し、クラシックへ向けた賞金を加えた。 12月の朝日杯フューチュリティステークスは武豊で臨み、また大きく出遅れて16着に終わる。前に行けた日と、行けなかった日。2歳のフロムダスクは、その両方を交互に見せて年を越した。

砂の国、そして長い夜

3歳初戦のクロッカスステークスは1番人気で3着。次に選ばれた舞台は、日本から遠かった。2023年2月25日、サウジアラビア・リヤドのキングアブドゥルアジーズ競馬場、ダート1600メートルのサウジダービー。森秀行はこのレースを2020年のフルフラット、2021年のピンクカメハメハで二年続けて勝っており、三度目を狙う遠征だった。鞍上は川田将雅。現地の3番人気に推されたが、スタートで後手を踏み、蹴り上げられる砂を嫌がって9着に終わる。 帰国して5月7日、NHKマイルカップ。1枠1番、17頭立ての17番人気。稍重の東京で横山和生は内枠を生かして先頭に立ったが、直線の途中で脚が止まった。上がり3ハロン(最後の600メートル)は39秒6。勝ったシャンパンカラーから4秒2遅れの17着だった。 ここから長い夜が始まる。舞台は3勝クラスに下がり、2023年9月のセプテンバーステークスから2025年8月の長岡ステークスまで15戦。1200メートルも、1400も、1600も走った。掲示板には何度も載った——4着が三度、2025年1月の若潮ステークスでは戸崎圭太と再び組んで先行し、9番人気で2着。だが勝てない。乗り替わりも続いた。デビューからここまで、手綱を取った騎手は27戦で17人にのぼる。決まった主戦騎手を持つことは、一度もなかった。

三年二か月ぶりの朝

2025年11月8日、京都芝1600メートルの清水ステークス。12頭立ての大外、8枠12番。西村淳也を背に、単勝は70.2倍の11番人気だった。外枠からためらわず内へ潜り込み、先頭に立って粘る。1分33秒0、ミッキージュエリーにコンマ1秒差。2022年9月の新馬戦から21戦、三年二か月を経た二つ目の勝利で、5歳の秋にようやくオープン馬になった。 明けて2026年、リステッドの東風ステークスは14着、六甲ステークスは10着。マイルでは通用しなかった。5月16日、京都芝1200メートルの鞍馬ステークスで距離を戻すと、松若風馬を背に上がり32秒5の脚を使って5着。勝ち馬フリッカージャブとの差はコンマ5秒。短いところなら、まだ脚は残っている。夏の目標はCBC賞に定まった。 鞍上に指名されたのは、中井裕二だった。1993年生まれ、京都府亀岡市の出身。2012年3月3日に中京競馬場でデビューし、その日の2鞍目で初勝利を挙げている。2年目の2013年に37勝。それがいまも自己最多で、以後は騎乗数が年々減り、2026年もここまで3勝しかなかった。重賞は35回挑んで、一度も勝っていない。フロムダスクに乗るのは、これが初めてだった。

三十二秒四のあとで

8月9日、中京。よく晴れた午後だった。芝1200メートル、18頭のハンデ戦。フロムダスクは1枠2番、内の内である。 ゲートが開く。好発だった。前年の勝ち馬インビンシブルパパがハナを主張する。中井はその後ろ、内の3番手に馬を置いた。前がどれだけ速く流れても、追いかけない。3コーナー、4コーナー。隊列は動かない。中井は内を離れない。 最初の3ハロンは32秒4。逃げた馬は一区間を10秒1で刻んでいる。それは、誰かが払わなければならない速さだった。 直線に向くと、中京の坂が待っている。ラップが、ここで変わる。10秒台で続いてきた一区間が11秒台の後ろへ落ち、前で競り合っていた馬たちの脚が坂の途中で重くなる。 フロムダスクの脚だけが、変わらなかった。内の3番手から前を捉え、そのまま伸びた。後ろは、離れていく。ゴールを駆け抜けたとき、後続との差は2馬身あった。 右の拳が、上がった。中井はその瞬間を「(ガッツポーズは)正直、馬はしんどかったところだったと思うので、申し訳ないと思いながらも自然と体が動いた」[^1]と振り返る。しんどいところで、なお伸びた馬。それを知っている鞍上の拳だった。

出典:デイリースポーツ「【CBC賞】中井裕二 苦節15年36回目挑戦で重賞初制覇 テン乗り12番人気フロムダスクと「良かった。長かった」」2026年8月10日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/08/10/0020689509.shtml、閲覧日:2026年9月5日。

長かった、を分け合う

検量室の前に、藤懸貴志と松山弘平が歩み寄ってきて、中井を抱きしめた。松山は四年前、小倉の雨のなかでこの馬を初めて勝たせた騎手である。「良かった。長かった」[^1]。デビューから15年目、36回目の重賞挑戦で手にした初めてのタイトルだった。結果を出したときの喜びは一瞬で、それ以外は辛くしんどい日々が多かった、それでも下を向かず上だけを見て努力してよかった——中井は目を潤ませてそう語った。乗せてくれた藤田オーナーと、付き合いの長い厩舎スタッフの仕上げを信じて乗った結果だ、とも。清水亮助手は、ジョッキーの会心の騎乗ですべてがうまくいった日だと振り返っている。森秀行にとってはこのレース3勝目、藤田晋にとっては、米国のセールで買った2歳馬が重賞にたどり着いた一鞍だった。中井が騎手として初めてゲートに入った中京で、14年後に手にした勲章である。 「長かった」は騎手の言葉だが、馬の時間でもある。新馬勝ちから次の勝利まで21戦、三年二か月。背に乗った騎手は27戦で17人。決まった主戦を持たなかった馬が、初めて乗った騎手に初めての重賞を運んだ。しんどいところで伸びる脚を、その日初めて背にいた男が信じた。それだけのことが、15年と三年二か月を一度に晴らした。 「夕暮れから」。相方のティルドーンが「夜明けまで」を担い、二頭で一つの言い回しになるはずだった名である。この馬は自分の半分だけを持って走り続け、6歳の夏、自分の力で朝を一つ引き寄せた。次にゲートが開く日、フロムダスクはもう伏兵ではない。それでも走り方は変わらないだろう。好発を決め、前の背中を見て、坂で伸びる。夕暮れから始まる名を持つ馬に朝がもう一つ来るかどうかは、まだ誰も知らない。

出典:デイリースポーツ「【CBC賞】中井裕二 苦節15年36回目挑戦で重賞初制覇 テン乗り12番人気フロムダスクと「良かった。長かった」」2026年8月10日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/08/10/0020689509.shtml、閲覧日:2026年9月5日。

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