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ジーティーマイカ
通算成績2戦2勝
獲得賞金4,211万円
生年月日 2024.03.11(令和6年)毛色 黒鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GIII中京2歳S | 中京 芝1400 | 1人気 | 松山弘平 | 1:19.7 | 上り33.0 | ![]() | |
| 1 | 2歳新馬 | 福島 芝1200 | 1人気 | 松山弘平 | 1:08.4 | 上り33.6 |
血統
金色の名は掲載馬 — その馬のページへ/点線の名は押すと一言解説| First Defence | ||
| Honest Lady | ||
| Bird Flown | ||
| Silver Star | ||
| ダイワメジャーDaiwa Major | ||
| ボランス | ||
| エクソセット |
旅程 — この馬の物語
2024年生まれの黒鹿毛の牝馬。父シスキン、母ベルカプリ。主な勝ち鞍は中京2歳S。
花が舞う ― 洞爺湖の当歳と、まだ厩舎のない調教師
2024年3月11日、北海道洞爺湖町のレイクヴィラファームに黒鹿毛の牝馬が生まれた。ジーティーマイカ。馬主・田畑利彦の冠名「ジーティー」に、「花が舞う」の意を添えた名である。 父シスキンは米国生まれ、アイルランド調教の快足馬だった。2歳で四戦無敗のままGIフェニックスステークスを制し、翌2020年にはアイリッシュ2000ギニーも無敗で勝つ。2021年から安平の社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたが、初年度はアクシデントのため、20頭と交配したところで大事を取って休ませる滑り出しだった。母ベルカプリはダイワメジャー産駒。芝の1400メートルと1600メートルで3勝を挙げ、2017年の桜花賞にも出走している(17着)。母の母ボランスは出走記録のないモンジュー産駒で、その母エクソセットはアメリカから輸入された牝馬。重賞馬の名がひしめく牝系ではない。だからこそ、この牝馬が勝つたびに、一族の履歴は新しく書き足されていく。 2024年のノーザンファームミックスセール。当歳のこの牝馬を、田畑が5940万円で落札した。会場でその姿に目を奪われた一人が、まだ自分の厩舎を持たない技術調教師だった。前川恭子。「ゴムまりみたいだったんです。バネもあって、バランスもすごく良くて」[^1]。 前川はJRA史上初の女性調教師である。筑波大学の馬術部から厩務員の道に入り、栗東の﨑山博樹厩舎で15年、厩務員と調教助手として馬に触れた。2018年に師が世を去って厩舎が解散し、坂口智康厩舎などを経て、5度目の挑戦となった2023年12月に調教師試験に合格。2025年3月5日、20馬房の厩舎を開いた。ジーティーマイカは、その開業より前から預けられていた一頭である。
出典:馬トク報知「【中京2歳S】前川恭子調教師がジーティーマイカでJRA女性トレーナー初の重賞制覇「ホッとした」」2026年8月31日配信、閲覧日:2026年9月5日。
福島、七馬身 ― 一分八秒四
デビューは2026年6月28日、福島の芝1200メートル。牝馬限定の新馬戦に14頭が並び、ジーティーマイカは1番人気に推された。鞍上は松山弘平。 スタートはやや遅れた。それでも二の脚で3番手につけ、先頭を行くスペシャルサンクスと、それを追うサリードゥを前に見ながら3コーナー、4コーナーを回る。松山が仕掛けたのは4コーナーだった。そこからの脚がすごかった、と鞍上は振り返っている。直線で外から先頭に立つと、あとは独走だった。上がり3ハロン(最後の600メートル)はメンバー最速の33秒6。2着サリードゥに7馬身の差をつけてゴールを駆け抜けた。 勝ち時計は1分8秒4。福島芝1200メートルの2歳コースレコードに並ぶタイムだった。新馬戦で7馬身差、しかもレコードタイ。松山は、余裕をもっての7馬身だった、スピードがあって強かった、と言葉を重ねた。前川はといえば、能力があるとは思っていたが強い勝ち方をしてくれてホッとした、と安堵を口にし、距離はもう少しあってもいい、と早くも次を見ていた。
大外の九番 ― 中京、最後の一ハロン
二か月後、舞台は中京の芝1400メートルに移った。中京2歳ステークス。デビュー2戦目で重賞、しかも1ハロンの距離延長である。それでも少頭数の1番人気に、圧倒的な支持が集まった。 枠は大外だった。ゲートが開くと、森秀行厩舎の米国産馬ジャスパートレノが先頭に立ち、序盤から速い流れをつくる。松山弘平は、その流れに乗らなかった。距離が延びるぶん位置取りは意識せず、前にいる馬の後ろで脚をためることだけを考えた、と後に語っている。ジーティーマイカは馬群の外、後ろから数えたほうが早いあたりで、3コーナーも4コーナーも動かない。 直線に入る。前を行く馬たちの流れは、終いまで緩まない。松山は直線の半ばまで軽く促す程度で、手綱を大きくは動かさなかった。残り1ハロン。右のステッキが入る。そこでギアが切り替わった。内で粘る馬たちの外を、黒鹿毛が一気に飲み込んでいく。上がり3ハロンは33秒0。このレースで、誰よりも速い脚だった。 ゴール板を先頭で駆け抜けたとき、後ろとの差は1馬身3/4。2着に入ったのは、同じシスキンを父に持つシスキンブルーム。逃げたジャスパートレノは4着に粘った。後方から、外から、最後の1ハロンだけで決めた重賞だった。
走るのは私じゃない ― 安堵の人
この勝利は、一頭の重賞初制覇であると同時に、一人の記録でもあった。前川恭子、JRAの女性調教師として初めての重賞制覇。開業2年目、重賞への挑戦は12度目だった。それまでの最高着順は、前年暮れの有馬記念でサンライズジパングが走った5着である。記録の残る1985年以降、海外からも12人の女性調教師がJRAに管理馬を送り込み、そのなかにはゲイ・ウォーターハウスやクリスティアーヌ・ヘッドといったGIトレーナーもいたが、日本の重賞を勝った者はいなかった。 ただ、前川本人の言葉はいつも静かだ。福島の新馬戦でも、阪神で挙げた中央初勝利の日も、そしてこの日も、最初に出てくるのは「ホッとした」だった。中央初勝利の日には、天国の﨑山も喜んでくれているだろう、とも語っている。師のもとで15年を過ごした厩務員が、自分の厩舎で馬を勝たせるまでに、それだけの時間がかかった。 女性初の快挙について問われた前川は、こう答えた。「走るのは私じゃないので関係ないんですけど、そういったことで注目していただけて、しかもすごく応援していただけているので、本当にうれしい限りです」[^1]。 走ったのは、たしかに馬である。けれど、当歳の姿に目を奪われて開業前から預かり、ゴムまりのようだった仔をここまで仕上げたのは彼女の厩舎だ。鞍上の松山も、調教で非常にうまく馬をつくってもらっている、と語っている。走るのは馬で、つくるのは人。その二つがかみ合ったとき、記録は静かに更新される。 福島で7馬身、中京で最後の1ハロン。ジーティーマイカが見せた脚は、まだ二度だけだ。次にどこで花が舞うのかは、これから決まる。安堵の人がもう一度「ホッとした」と言えるように、洞爺湖生まれの黒鹿毛は、次の1ハロンをためている。
出典:馬トク報知「【中京2歳S】開業2年目の前川恭子調教師がJRA女性トレーナー初の重賞V「うれしい限りです」 ジーティーマイカも初タイトル」2026年8月30日配信、閲覧日:2026年9月5日。
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