名馬の記憶を、再生する。
RACE & RETIREMENT FILM ARCHIVE
YouTubeに散らばる名レースの記録と、北海道で余生を送る引退馬たちの映像を、ひとつの蹄跡(ていせき)として結び直すアーカイブ。
レースの三分間だけが、馬の一生ではない。ゴール板の先に続く時間まで、辿れるように。
物語で辿る
テーマ別に名馬の歴史を読む・観る注目の映像
編集部の◎印 — まずはここからハロン棒をつまんで、過去へ。
この頃の映像
その頃の出来事
◎=選択中の年蹄跡新聞 — 縮刷版
この時代を駆けた馬
牧場地図
ピンを選ぶと、その年に暮らしていた馬と映像が出てきますスライダーを動かすと、馬の所属がその年の状態に変わります。
HOKKAIDO — HORSE FARM MAP
物語で辿る競馬史
章を読み、映像を観て、次の章へ名馬録
スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。
グランアレグリア
通算成績15戦9勝
獲得賞金10億7,381万円
生年月日 2016.01.24(平成28年)毛色 鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GIマイルチャンピオンシップ(ラストラン) | 阪神 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:32.6 | 上り32.7 | 映像 | |
| 3 | GI天皇賞(秋) | 東京 芝2000 | 2人気 | C.ルメール | 1:58.1 | 上り33.8 | 映像 | |
| 2 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:31.7 | 上り32.9 | 映像 | |
| 1 | GIヴィクトリアマイル | 東京 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:31.0 | 上り32.6 | 映像 | |
| 4 | GI大阪杯 | 阪神 芝2000 | 2人気 | C.ルメール | 2:02.5 | 上り37.4 | 映像 | |
| 1 | GIマイルチャンピオンシップ | 阪神 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:32.0 | 上り33.2 | 映像 | |
| 1 | GIスプリンターズステークス | 中山 芝1200 | 1人気 | C.ルメール | 1:08.3 | 上り33.6 | 映像 | |
| 1 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 3人気 | 池添謙一 | 1:31.6 | 上り33.7 | 映像 | |
| 2 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 2人気 | 池添謙一 | 1:08.7 | 上り33.1 | 映像 | |
| 1 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 1人気 | C.ルメール | 1:19.4 | 上り33.5 | 映像 | |
| 5 | GINHKマイルカップ | 東京 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:32.7 | 上り34.3 | 映像 | |
| 1 | GI桜花賞 | 阪神 芝1600 | 2人気 | C.ルメール | 1:32.7R | 上り33.3 | 映像 | |
| 3 | GI朝日杯フューチュリティステークス | 阪神 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:34.3 | 上り34.6 | 映像 | |
| 1 | GIIIサウジアラビアロイヤルカップ | 東京 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:34.0 | 上り34.0 | 映像 | |
| 1 | 新馬 | 東京 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:33.6R | 上り33.5 | 映像 |
血統
金色の名は蹄跡に掲載 — その馬のページへ| 父ディープインパクトDeep Impact | サンデーサイレンスSunday Silence |
| ウインドインハーヘアWind in Her Hair | |
| 母タピッツフライTapitsfly | タピットTapit |
| フライングマーリンFlying Marlin |
引退後の暮らし
ノーザンファーム引退後の映像は未登録です。ノーザンファーム(安平町早来)の様子は牧場地図で見る
蹄跡 — この馬の物語
スペイン語で「大歓声」。府中と阪神のマイルを幾度も歓声で満たした、史上最速の女王。GI6勝、芝マイルGI5勝は日本馬最多。
「大歓声」という名の予言
2016年1月24日、北海道安平町のノーザンファーム。日米のGIを跨いだ血を受けて生まれた牝馬に、サンデーレーシングが総額7,000万円(1口175万円×40口)で募集した一頭として与えられた名は、スペイン語で「大歓声」を意味するグランアレグリア。命名の時点では誰も知らない。この名が、府中の直線で、阪神のゴール板で、幾度となく文字どおりの大歓声に変わることを。美浦の藤沢和雄厩舎へ。生涯ただ一人の師のもとで、女王の物語は静かに動き始めた。
血のかけ算
父は無敗の三冠を駆け抜けた七冠馬ディープインパクト。母タピッツフライは米国でジャストアゲームステークスとファーストレディステークスのGIを2勝した快速牝馬で、その父は北米のリーディングサイアーに輝いたタピットだ。日本の至宝のスピードと、アメリカが磨いたマイルの瞬発力。新馬勝ちの報は「父母合わせて日米G1・9勝の良血馬」と伝えられた。絵に描いたような良血──だが血の格はあくまで出発点に過ぎない。それを証明したのは、デビュー戦のたった一分半だった。
伝説の新馬戦、そして牡馬の壁
2018年6月3日、東京競馬場5R。ルメールを背にゲートを出た2歳牝馬は、終始持ったまま2着ダノンファンタジー(後の2歳女王)に2馬身差。時計は1分33秒6、従来の2歳新馬レコードを1秒1も削る驚異の数字だった。秋、サウジアラビアロイヤルカップを3馬身半差で圧勝し無傷の重賞制覇。1番人気で臨んだ朝日杯フューチュリティステークスでは牝馬の38年ぶり制覇が期待されたが、直線で内にモタれて3着。最後に交わしていったのは、生涯のライバルとなるアドマイヤマーズだった。牡馬の壁は、想像以上に厚かった。
桜花賞、アーモンドアイを超えて
2019年4月7日、阪神。トライアルを使わず本番に直行した彼女は、3〜4コーナーで自ら動き、直線で抜け出すと独走に持ち込んだ。後続を2馬身半突き放したタイムは1分32秒7。前年にアーモンドアイが刻んだ記録を0.4秒上回るレースレコードだった。藤沢和雄にとっては2004年ダンスインザムード以来15年ぶり2度目の桜花賞。世代の頂点に、最速の牝馬が立った。だが頂は、長く平らではいられない。
降着、そして膿の季節
栄光の直後に影が差す。NHKマイルカップ、1番人気の彼女は4位入線から斜行による降着で5着に。鞍上ルメールには騎乗停止の裁定が下った。秋にはスプリンターズステークスでの始動を計画するも、左前脚に溜まった膿が癒えず回避。マイルチャンピオンシップも見送り、戦列を離れる時間が続いた。およそ7か月半ぶりの実戦となった阪神カップ。初めての1400mを5馬身差で完勝すると、ルメールは舌を巻いた。「直線で追ったら彼女はアッという間に抜け出した」。藤沢は静かに応じた。「あのくらい走っても不思議ではない。驚くことじゃない」。女王は、止まっていなかっただけだった。
女王戴冠──短距離GI、年間三冠
古馬となった2020年、グランアレグリアは完全に開花する。主戦ルメール不在の高松宮記念は池添謙一とのコンビで惜しくも2着(繰り上がり)。雪辱の舞台は安田記念。芝GI8勝目を狙うアーモンドアイが圧倒的人気を集める中、3番人気の彼女は中団から抜け出し2馬身半差の完勝。秋はスプリンターズステークス、続くマイルチャンピオンシップを連勝。ロードカナロア以来となるJRA短距離GI年間3勝。スプリントもマイルも、この馬の庭になった。
完全制覇と、有終のラストラン
2021年。初の2000m・大阪杯は重馬場に泣いて4着。だが得意のマイルへ戻ったヴィクトリアマイルでは、1.3倍の支持に4馬身差で応え、史上初の古馬・芝マイルGI完全制覇を達成。ルメールは「やっぱり強かった。レベルが違う」と言い切った。中2週の安田記念はダノンキングリーにアタマ差及ばず2着。夏には喉の手術を経て、天皇賞(秋)では3歳エフフォーリアと三冠馬コントレイルに屈し3着。そして最後の舞台はマイルチャンピオンシップ。中団後方から大外を伸び、2着シュネルマイスターに3/4馬身差。連覇で有終の美を飾り、牝馬史上6頭目の賞金10億円突破を刻んだ。
歓声のあとに
2021年12月、引退式。競走馬登録を抹消し、彼女は生まれ故郷ノーザンファームへ繁殖牝馬として帰っていった。2023年1月、エピファネイアとの初仔・グランマエストロが誕生。父ディープインパクトの血と、海を渡ってきた母タピッツフライの血は、次の世代へと受け継がれていく。15戦9勝、GI6勝。1600mを軸に、スプリントから中距離まで挑み続けたその脚跡は、ただ速いだけの記録ではない。「大歓声」と名づけられた一頭が、その名を何度も現実にしてみせた──競馬場が彼女の名を呼ぶたび、答えは決まっていた。最速で、最強で、いちばんふさわしい歓声の主だった。