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牧場帖
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ジャスティンシカゴ
通算成績7戦3勝
獲得賞金8,396万円
生年月日 2023.02.13(令和5年)毛色 栗毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GIIセントライト記念 | 中山 芝2200 | 12人気 | 原優介 | 2:14.0 | 上り34.2 | ![]() | |
| 1 | 3歳以上1勝クラス | 東京 芝2000 | 1人気 | 原優介 | 2:01.0 | 上り33.6 | ||
| 2 | LプリンシパルS | 東京 芝2000 | 5人気 | 原優介 | 1:58.6 | 上り33.9 | ![]() | |
| 2 | フリージア賞 | 東京 芝2000 | 4人気 | 荻野極 | 1:58.9 | 上り34.4 | ||
| 6 | 葉牡丹賞 | 中山 芝2000 | 9人気 | 北村宏司 | 1:59.0 | 上り35.8 | ||
| 12 | GIII札幌2歳S | 札幌 芝1800 | 7人気 | 横山武史 | 1:52.8 | 上り37.8 | ![]() | |
| 1 | 2歳新馬 | 札幌 芝1800 | 2人気 | 武豊 | 1:52.6 | 上り35.6 |
血統
金色の名は掲載馬 — その馬のページへ/点線の名は押すと一言解説| 父スワーヴリチャードSuave Richard | ハーツクライHeart's Cry | |
| キングカメハメハKing Kamehameha | ||
| テーブルロンド | Astronomer Royal | |
| Tanzania |
旅程 — この馬の物語
2023年生まれの栗毛の牡馬。父スワーヴリチャード、母エリカブライト。主な勝ち鞍はセントライト記念。
シカゴという名 ― 勝てなかった母の、最初の子
2023年2月13日、北海道安平町のノーザンファームで栗毛の牡馬が生まれた。父はジャパンカップと大阪杯を勝ったスワーヴリチャード。母エリカブライトにとって、はじめての子どもだった。 母もまた、競走馬だった。三歳の一月に中京でデビューし、中央で七度走る。3着は二度あったが、勝ち星には届かなかった。舞台を園田と姫路に移して、さらに三度。2着、3着、2着。十度走って、一度も先頭でゴールしないまま、母は繁殖牝馬になった。 その母の母、テーブルロンドはフランスで走った馬である。リステッド競走を勝ち、重賞で2着と3着に入っている。 名はジャスティンシカゴ。馬主・三木正浩の冠名「ジャスティン」に、アメリカの地名を重ねた。預かったのは美浦の宮田敬介調教師である。 二歳のころから、牧場はこの馬の心肺の強さを伝えていた。「心音がいい」[^1]。ただ、心と体の釣り合いがなかなか取れなかった。その素質が結果に表れるまでには、少し時間がかかる。
出典:東スポ競馬「【セントライト記念】持ち味はスタミナ! 原優介とコンビ継続即決のジャスティンシカゴが菊で3冠阻止へ」2026年9月13日配信、閲覧日:2026年9月23日。
雨の札幌 ― 先頭のままの初陣
2025年8月17日、札幌の芝1800メートル。雨で馬場は稍重、5頭立ての新馬戦が初陣だった。鞍上は武豊。2番人気のジャスティンシカゴは、最初のコーナーから最後のコーナーまで一度も先頭を譲らない。5番手から追い上げた1番人気ジーティーメティオを、クビ差だけ残して逃げ切った。 三週間後、同じ札幌の札幌2歳ステークス。横山武史に手綱が替わり、7番人気で重賞に挑む。4番手で最後のコーナーを回ったが、そこから脚が続かなかった。上がり三ハロン(最後の600メートル)は37秒8で、出走馬のなかで最も遅い。12頭立ての12着だった。 暮れの中山、葉牡丹賞は北村宏司を背に9番人気で6着。二歳の一年は、デビュー戦の一勝だけで終わった。
半馬身の向こう ― 原優介と迎えた春
年が明けた2026年2月、東京のフリージア賞。荻野極を背に、スタートから先頭に立ってそのまま粘り込み、2着に入った。勝った牝馬ファムクラジューズとの差は1馬身と4分の1。陣営はのちに、このレースの前あたりから心と体の釣り合いが整ってきたと明かしている。 5月3日、東京のプリンシパルステークス。日本ダービーへの優先出走権が、1着馬にだけ与えられるトライアルである。ここで初めて手綱を取ったのが、原優介だった。この春、フラワーカップで初めての重賞を勝ったばかりの騎手である。 5番人気。7番手、5番手、4番手と、コーナーを回るたびに位置を上げて直線へ向く。上がりは33秒9。けれど勝ったのは10番人気のメイショウハチコウで、差は半馬身だった。ダービーへの切符は、その半馬身の向こう側にあった。 6月、同じ東京の2000メートル。古馬も相手にする1勝クラスで、今度は1番人気に推された。原はスタートから先頭に立ち、道中をゆったりと運ぶ。最後の600メートルを33秒6でまとめ、後続を2馬身半突き放した。 原は早いうちから、この馬のスタミナを買っていた。いずれは3400メートルのダイヤモンドステークスでも、と陣営に進言したほどだったという。
九月十三日、二列目の内 ― 待つということ
セントライト記念、中山の芝2200メートル。3着までに、菊花賞への優先出走権が与えられる。ジャスティンシカゴは12番人気だった。 馬場は稍重。ゲートが開くと、原は迷わず手綱を押した。前へ行く。最初のコーナーを2番手で回り、先行する一団の内側、二列目に収まった。 流れは遅かった。最初の1000メートルは62秒5。ゆったりとした流れが続き、先頭も、後ろの馬群も、脚を溜めたまま進んでいく。 こういう流れで問われるのは、折り合いである。前へ行きたがる気持ちを抑え、力をしまっておけるかどうか。原はこの馬に、乗り難しさを感じていた。それでもこの日は、厩舎と牧場が中山に合わせて仕上げてくれたおかげで、折り合いがついたという。 やがて、時計が縮み始める。三つ目のコーナーで、アスクエジンバラが先頭に立った。ジャスティンシカゴは4番手。まだ動かない。 四つ目のコーナー。3番手。手応えは残っていた。あとは、前が開くかどうかだけだった。 「3、4角で手ごたえ抜群だったのであとは進路が空くことだけを願って、空いたところで仕掛けただけです」[^1] 直線。前の馬と馬のあいだに、隙間ができる。原はそこへ馬を入れた。ジャスティンシカゴは間を割って抜け出し、先頭のアスクエジンバラをかわしていく。四つ目のコーナーで後ろにいたサヴォアフェールとアウダーシアが追ってきたが、届かなかった。 ゴール板を過ぎたとき、2着のサヴォアフェールとのあいだには1馬身があった。
出典:東スポ競馬「【セントライト記念】持ち味はスタミナ! 原優介とコンビ継続即決のジャスティンシカゴが菊で3冠阻止へ」2026年9月13日配信、閲覧日:2026年9月23日。
心音 ― まだ鳴らしていない音
重賞の初勝利だった。レースのあと、原はカメラの前で、本番もこの馬で挑ませてほしいと願い出た。宮田の返事は早い。これだけいい競馬をしてくれているのだから、もちろん原で――。 牧場が二歳のころから伝えていたのは、心臓の音だった。原が3400メートルを口にしたのも、そのスタミナを見込んでのことだった。 けれど、セントライト記念を勝たせたのは心臓ではない。1000メートル62秒5の緩い流れのなかで、内の二列目にじっと収まっていたこと。前が開くまで、仕掛けを待てたこと。原が勝因に挙げたのも、スタミナではなく折り合いだった。牧場が聞いたあの音は、中山の2200メートルでは、まだ鳴らしきっていない。 十度走って一度も先頭でゴールできなかった母の、最初の子が、重賞のゴールを先頭で駆け抜けた。そして一番の武器は、まだ胸のなかにしまわれたままでいる。
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