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レッチュベルク
通算成績2戦2勝
獲得賞金4,215万円
生年月日 2024.01.24(令和6年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GIII新潟2歳S | 新潟 芝1600 | 1人気 | 田辺裕信 | 1:34.7 | 上り32.8 | ![]() | |
| 1 | 2歳新馬 | 東京 芝1600 | 2人気 | 荻野極 | 1:36.8 | 上り33.7 |
血統
金色の名は掲載馬 — その馬のページへ/点線の名は押すと一言解説| 父インディチャンプIndy Champ | ステイゴールドStay Gold | |
| キングカメハメハKing Kamehameha | ||
| リプリートII | ||
旅程 — この馬の物語
2024年生まれの鹿毛の牡馬。父インディチャンプ、母リヴィア。主な勝ち鞍は新潟2歳S。
山を貫く名 ― 母の初仔
アルプスを貫く鉄道トンネルの名を、この馬はもらった。レッチュベルク——スイスのベルン州カンデルシュテッグとヴァレー州ゴッペンシュタインを結ぶ全長十四キロあまりの隧道で、1913年に列車が走り始めてから百年を超える。峠を越えるのではなく、山の腹をまっすぐに抜ける。その名が一頭の競走馬に与えられた理由を、記録は「鉄道トンネルの名前より」とだけ記している。 2024年1月24日、北海道安平町のノーザンファームに生まれた鹿毛の牡馬。母リヴィアは、シルクの勝負服で6戦して一度も勝てなかった牝馬である。中京の芝2200メートルで二度、2着まで来た。それが精一杯だった。2022年の秋に引退し、翌々年の一月に最初の仔を産む。それがこの馬だった。母の初仔である。 血の裏側は厚い。母の父は欧州の大種牡馬ガリレオ。母の母リプリートIIは英国ジャドモントの生産で、その母バンクスヒルは2001年のブリーダーズカップ・フィリー&メアターフを五馬身半で圧勝した名牝だ。バンクスヒルの全兄ダンシリは凱旋門賞馬レイルリンクを出してフランスのリーディングサイアーになり、全妹インターコンチネンタルも同じブリーダーズカップの舞台を勝っている。海の向こうで栄えた一族の、日本に渡った枝の先端に、この馬はいる。 父インディチャンプは2019年に安田記念とマイルチャンピオンシップを勝ったマイル王で、2022年から北海道新冠の優駿スタリオンステーションで種牡馬になった。2024年のセレクトセール当歳市場。この仔を3850万円(税込)で落としたのが村木克子だった。桃に黒の十字襷——シュトルーヴェが日経賞と目黒記念を勝った、あの勝負服のオーナーである。預け先は美浦の久保田貴士。明治大学の馬術部で全日本学生選手権を三連覇し、英国で二年の研修を積んで2003年に厩舎を開いた調教師で、マリアライトでエリザベス女王杯と宝塚記念を勝っている。馬に乗る側から育てる側へ回った男の手に、山の名を持つ初仔が渡った。
雨の府中、内の三番手
2026年6月20日、東京競馬場は小雨で、芝は稍重だった。芝1600メートルの新馬戦、10頭立て。1番人気はルメールが乗るコナパームスで、レッチュベルクは荻野極を背に2番人気だった。最内の1番枠から出ると、ペアスターロードが作る先頭から三番手の内で脚をためる。 直線、内からするりと抜けた。後続を3馬身離してゴールに入り、上がり3ハロン(最後の600メートル)は33秒7。この日の出走馬でただ一頭、33秒台で上がってきた。 「跳びがきれいな馬なので、きょうの馬場ではモジモジするようなところもありましたが、エンジンが掛かっていい所に出してしまえば本来の走り」[^1]。荻野は湿った芝を苦にした素振りまで正直に明かしたうえで、新馬戦としては上々と評した。久保田は勝ち方を良しとし、次は新潟2歳ステークスあたりを目指すと語った。左回りのマイルという条件が、そのまま重なる。 ただし、鞍上は変わることになる。デビュー戦で手綱を取った荻野が八月上旬に新潟で左足首を骨折し、代打として回ってきたのが田辺裕信だった。初めて跨った一週前の追い切りで、田辺は思ったより手応えがいいと感じ、運で新馬を勝った馬ではないと言い切った。久保田のほうは初戦の出負けを気にかけ、ゲートでの駐立は練習でも問題ないと確かめて当日を迎えている。
出典:デイリースポーツ「【新馬戦】レッチュベルク 3馬身差快勝 久保田師「いい勝ち方をしてくれた」今後は新潟2歳S目指す」2026年6月21日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/06/21/0020500113.shtml、閲覧日:2026年9月5日。
新潟、直線の内側 ― 二〇二六年八月二十三日
2026年8月23日、新潟。空は曇り、芝は良。田辺裕信を背に、レッチュベルクは1番人気で新潟2歳ステークスのゲートに入った。 ゲートが開くと、短い距離を使ってきた馬たちの行き脚が速かった——田辺はそう振り返る。インカルナータが先頭に立ち、田辺は好位を取りにいく。取りにいったぶん、馬は少し熱くなった。序盤の流れは速く、そこから一度ゆるむ。隊列はほどけないまま、外回りの長い直線へ向かって力をためていく。その間に馬は落ち着きを取り戻した。途中から冷静になってくれた、と田辺はレース後に振り返っている。 三コーナーで五番手、四コーナーで四番手。すぐ隣にトウシンマジックがいた。直線に入ってラップは一気に速まり、ゴール前の四百から二百までが、この日でいちばん速い区間になる。 先頭を走っていたインカルナータが、外へ流れた。空いた前へ、トウシンマジックが外から出て先頭に立つ。レッチュベルクはその内にいた。内から馬体を併せて、伸び比べになる。ここで退かなかった。ゴールを前にトウシンマジックをかわし、そのまま1馬身1/4離して駆け抜けた。上がりは32秒8。この日の出走馬でいちばん速い脚だった。 デビュー戦と同じ、内からの抜け出し。二戦目で重賞を手にした。
トンネルの向こう
田辺にとって新潟2歳ステークスは、2015年のロードクエスト以来の二勝目だった。この夏四つ目の重賞で、通算では五十個目にあたる。父インディチャンプにとっては、春のチューリップ賞を勝ったタイセイボーグに続く二頭目の重賞勝ち馬で、その舞台は前の年にタイセイボーグが2着に来たのと同じレースだった。3着のトップチェッカーもインディチャンプ産駒。新潟のマイルは、マイル王の血に向いている。 「オープンに行っても恥ずかしくない馬だと思うので、これからも頑張って欲しいです」[^1]。重賞を勝った直後の言葉としては、ずいぶん控えめに聞こえる。だが田辺はその一週前に、運で新馬を勝った馬ではないと言い切っていた。控えめなのは評価ではなく、言い方のほうだ。久保田も良馬場での走りに期待を寄せ、本当に先々が楽しみだとレースの前から語っていた。 母リヴィアは六度走って、一度も勝てなかった。その初仔は二度走って、二度とも内から抜けた。峠を迂回せず山の腹をまっすぐに貫く隧道の名を負った馬は、いまのところ一度も遠回りをしていない。トンネルの向こうに何があるかは、まだ誰にも分からない。分かっているのは、入口の光がもう背中の側にあり、鹿毛の馬が前だけを向いて走っていることだ。
出典:競馬のおはなし(Yahoo!ニュース配信)「【新潟2歳S】田辺「オープンにいっても恥ずかしくない馬」レッチュベルクが無傷2連勝」2026年8月23日配信、閲覧日:2026年9月5日。
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