名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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マテンロウコマンドのイメージビジュアル
マテンロウコマンドMatenro Command
Matenro Command

マテンロウコマンド

通算成績15戦6勝

獲得賞金18,864万円

生年月日 2022.04.24(令和4年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
マテンロウコマンドの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIII東海S 中京 ダ1400 7人気 松山弘平 1:22.8 上り36.6映像
1 JpnⅢ黒船賞 高知 ダ1400 5人気 松山弘平 1:28.6 上り38.6
3 JpnⅢかきつばた記念 名古屋 ダ1500 4人気 松山弘平 1:32.9 上り37.7
11 GIII根岸S 東京 ダ1400 9人気 松山弘平 1:24.2 上り36.7映像
2 JpnⅢ兵庫ゴールドT 園田 ダ1400 1人気 松山弘平 1:27.8 上り38.1
10 GIII武蔵野S 東京 ダ1600 9人気 松山弘平 1:36.3 上り36.0映像
2 LグリーンChC 東京 ダ1600 2人気 松山弘平 1:36.2 上り36.6
2 JpnⅢ北海道スプリントC 門別 ダ1200 1人気 松山弘平 1:12.6 上り37.1
1 JpnⅡ兵庫CS 園田 ダ1400 1人気 松山弘平 1:27.9 上り37.3
1 OP昇竜S 中京 ダ1400 2人気 松山弘平 1:23.2 上り36.1
1 3歳1勝クラス 中京 ダ1400 8人気 松山弘平 1:24.1 上り36.8
1 2歳未勝利 京都 ダ1400 1人気 松山弘平 1:26.9 上り38.2
3 2歳未勝利 京都 ダ1400 2人気 横山武史 1:26.0 上り37.8
4 2歳未勝利 京都 ダ1400 3人気 横山武史 1:27.7 上り39.8
10 2歳新馬 京都 芝1600 5人気 横山典弘 1:38.9 上り38.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
マテンロウコマンドの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ドレフォン 鹿毛Gio Ponti 鹿毛Tale of the Cat
Chipeta Springs
Eltimaas 鹿毛Ghostzapper
Najecam
ダイアナヘイロー 黒鹿毛キングヘイロー 鹿毛ダンシングブレーヴ
グッバイヘイロー
ヤマカツセイレーン 栗毛グラスワンダーGrass Wonder
ヤマカツサクラ
STORY

旅程 — この馬の物語

2022年生まれの黒鹿毛の牡馬。父ドレフォン 鹿毛、母ダイアナヘイロー 黒鹿毛。主な勝ち鞍は兵庫CS・黒船賞・東海S。

摩天楼の名を負って ― 新ひだかの黒鹿毛

2022年4月24日、北海道新ひだか町の岡田牧場で黒鹿毛の牡馬が生まれた。その三年前、同じ牧場に一頭の牝馬が繁殖として入っている。ダイアナヘイロー。27戦8勝、重賞3勝。前へ行って渋太い、そういう馬だった。 3歳の1月に京都の芝1600mでデビューし、6番人気で逃げ切った。だが5月に2勝目を挙げてからは条件戦で足踏みが続き、一年ものあいだ白星から遠ざかる。潮目が変わったのは4歳の6月で、降級戦を勝って火が付くと、4連勝で小倉の北九州記念を制した。5歳の阪急杯は7番人気での逃げ切り。その日は管理していた福島信晴調教師の定年最終日にあたり、勝利はそのまま花道になった。厩舎解散で大根田裕之厩舎へ移り、暮れの阪神カップは11番人気でまた逃げ切ってGIIを獲る。人気を裏切り続けた馬というより、人気の側が最後まで彼女の脚を測り損ねた馬だった。 その母に配されたのが、2016年のブリーダーズカップスプリントを勝った米国の快速馬ドレフォンである。生まれた黒鹿毛は2022年夏のセレクトセール当歳市場に上場され、4100万円で寺田千代乃の手に渡った。冠名は「マテンロウ」。名の意味は、摩天楼と、指揮する・率いるという言葉を重ねたもの。 血をさかのぼれば、4代母ローズサッシュはステイゴールドの半妹にあたる。牝系の遠い上流にロイヤルサッシュを置く一族から出た一頭は、しかしはじめ、芝を走らされることになる。

芝で十着 ― 砂へ下りる

2024年6月1日、京都の芝1600m。2歳新馬戦のゲートに入ったとき、馬体重は462キロだった。鞍上は横山典弘。5番人気に推されたが10着。芝の一戦は、それきりになる。 2戦目からダートへ矛先を変えた。10月6日、京都のダート1400m。スタートで後手を踏んで4着に終わる。このとき先頭でゴールしたのがダノンフィーゴだった。翌週の未勝利戦も3着。勝ち上がれない秋が続いた。 初めて勝ったのは11月3日、重馬場の京都である。鞍上は松山弘平。単勝2.3倍に応えて2着に1秒2の差をつけ、4戦目でようやく未勝利を脱した。以来この馬の背から、松山が降りたことはない。

中京、ダート千四百

明けて2025年1月12日、中京のダート1400m。3歳1勝クラスは16頭立ての8番人気という評価だったが、際どい競り合いをわずかに前で凌いで勝ち切った。馬体重は512キロ。デビュー時から50キロ増えている。 3月16日、同じ中京の同じ1400m。オープン特別の昇竜ステークスを差し切って3連勝を決めた。重馬場の砂を割って伸びる脚に、もう「未勝利に4戦かかった馬」の気配はない。 厩舎を預かるのは長谷川浩大。2003年から2012年まで騎手として乗り、2019年に開業して、ナムラクレアを重賞戦線へ送り出してきた調教師である。その手の中で、中京のダート1400mはこの馬にとって取りこぼしのない条件になっていく。

園田の五月 ― 鞍上の完全制覇

5月1日、園田競馬場。3歳限定のダートグレード競走・兵庫チャンピオンシップ(JpnII)で、マテンロウコマンドは単勝1.9倍の1番人気に推された。重賞は初挑戦である。 道中は3番手。直線で外に持ち出すと苦もなく抜け出し、ハッピーマンを退けて4連勝。初めての重賞タイトルを手にした。 この日、鞍上にも記録が生まれている。松山弘平はこの勝利で、兵庫のダートグレード4競走をすべて勝った史上初の騎手になった。神戸市に生まれ、小学4年で父と祖父に阪神競馬場へ連れて行かれ、翌年から競馬場の乗馬センターに通った男である。中学3年で競馬学校に落ちて1年浪人し、2009年3月1日、19歳の誕生日に小倉で初騎乗初勝利を挙げた。地元と呼んでいい砂の上で、その経歴に前例のない印がひとつ加わった。

二着の季節

ここから十か月あまり、勝ち星が止まる。 8月、門別の北海道スプリントカップ(JpnIII)は1番人気で2着。10月、東京のグリーンチャンネルカップも2着。11月、JRAの重賞に初めて挑んだ武蔵野ステークスは、東京のダート1600mで10着に沈んだ。 暮れの兵庫ゴールドトロフィー(JpnIII)は単勝2.0倍の1番人気。園田で先着していたはずのハッピーマンに、今度は半馬身だけ届かず2着に終わる。年が明けて根岸ステークスは11着。2月の名古屋・かきつばた記念は59キロを背負って3着で、先頭でゴールしたのはダノンフィーゴだった。未勝利戦で背中を見せられた相手に、二度目の先着を許したことになる。 地方では勝ち切れず、中央の重賞では二度続けて二桁着順に沈む。四歳の春までに積み上がったのは、勝利ではなく負け方の種類だった。

土佐の砂に、逃げる

3月24日、高知競馬場。稍重のダート1400mで争われた黒船賞(JpnIII)で、マテンロウコマンドは5番人気だった。前走で先着を許したダノンフィーゴが1番人気に支持されている。 この日は、控えなかった。ゲートを出ると迷いなく先頭に立ち、そのまま土佐の直線へ持ち込む。追ってきたダノンフィーゴを、コンマ1秒だけ前で振り切った。 母ダイアナヘイローが幾度も選んだ形だった。新馬戦も、阪急杯も、阪神カップも、彼女は前へ行って粘り込んでいる。息子は四歳の春になって、その形を自分の武器として使い始めた。未勝利戦で背中を見せられた相手を初めて後ろに置いたのも、この日である。

四歳の夏 ― 中京千四百、三戦三勝

東海ステークスは、2025年に姿を変えたレースである。長く一月に、ダート1800mのGIIとして争われてきたものが、中京のダート1400m、七月のGIIIになった。松山弘平は2020年、まだ1800mのGIIだった頃の東海ステークスを、京都でエアアルマスに乗って勝っている。同じ名を持つ、まるで別の競走だった。 2026年7月26日。四か月の休養を挟んだマテンロウコマンドは、14頭立ての大外14番枠から7番人気。58キロを背負い、逃げるメイショウハチローを射程に入れた位置で運んで、直線で外へ持ち出した。並びかけ、抜き、3/4馬身。1番人気ドンインザムードは伸びを欠いて3着だった。 1分22秒8。JRA重賞初制覇。そして中京のダート1400mは、これで3戦3勝になった。 母がJRAの重賞に初めて手を届かせたのも、四歳の夏だった。血の話をすれば、それだけのことである。だが十五戦を重ねてきた馬にとっては、その「それだけ」に二年ぶんの重さがある。 「地方だけでなく、中央で勝てたのはうれしく思います」[^1]。レース後の松山の言葉は、この馬がどこで勝ち、どこで勝てずにいたかを正確になぞっていた。JRA重賞は通算60勝目。同じドレフォンを父に持つスターアニスで桜花賞を、ロブチェンで皐月賞と東京優駿を勝った年の、真夏の一勝である。 摩天楼は一日では建たない。四歳の夏にもう一階を積み上げた黒鹿毛の頭上には、空がまだ広く残っている。

出典:デイリースポーツ「【東海S】7番人気のマテンロウコマンドがJRA重賞初勝利 松山「中央で勝てたのはうれしい」」2026年7月26日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/07/26/0020635337.shtml、閲覧日:2026年7月28日。

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