名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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サウンズオブアースのイメージビジュアル
サウンズオブアースSounds of Earth
Sounds of Earth

サウンズオブアース

通算成績30戦2勝

獲得賞金46,744万円

生年月日 2011.04.12(平成23年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
サウンズオブアースの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
16 GI有馬記念 中山 芝2500 14人気 藤岡佑介 2:34.5 上り38.2映像
14 GIジャパンカップ 東京 芝2400 13人気 田辺裕信 2:25.2 上り38.0映像
9 GII毎日王冠 東京 芝1800 10人気 田辺裕信 1:45.4 上り33.5映像
4 GII札幌記念 札幌 芝2000 13人気 藤岡佑介 2:01.2 上り36.5映像
12 GII目黒記念 東京 芝2500 5人気 H.ボウマン 2:30.9 上り34.9映像
7 GI有馬記念 中山 芝2500 14人気 C.デムーロ 2:34.2 上り34.7映像
12 GIジャパンカップ 東京 芝2400 11人気 田辺裕信 2:25.2 上り35.5映像
13 GII京都大賞典 京都 芝2400 2人気 横山典弘 2:24.6 上り35.4映像
4 GII札幌記念 札幌 芝2000 4人気 横山典弘 2:00.7 上り35.3映像
6 GIドバイシーマクラシッ メイダン 芝2410 4人気 C.ルメール 映像
8 GI有馬記念 中山 芝2500 4人気 M.デムーロ 2:33.4 上り35.8映像
2 GIジャパンカップ 東京 芝2400 5人気 M.デムーロ 2:26.2 上り34.5映像
4 GII京都大賞典 京都 芝2400 3人気 M.デムーロ 2:25.7 上り33.1映像
15 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 5人気 藤岡佑介 3:18.5 上り37.8映像
2 GII日経賞 中山 芝2500 1人気 福永祐一 2:36.9 上り33.9映像
2 GI有馬記念 中山 芝2500 5人気 M.デムーロ 2:33.0 上り34.7映像
5 GIジャパンカップ 東京 芝2400 5人気 M.デムーロ 2:25.0 上り34.4映像
2 GII京都大賞典 京都 芝2400 2人気 浜中俊 2:23.8 上り32.8
9 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 4人気 内田博幸 3:15.4 上り35.5映像
4 GII日経賞 中山 芝2500 1人気 M.デムーロ 2:30.5 上り34.0映像
2 GI菊花賞 京都 芝3000 4人気 蛯名正義 3:01.1 上り34.4映像
2 GII神戸新聞杯 阪神 芝2400 8人気 藤岡佑介 2:24.4 上り34.9
11 GI東京優駿 東京 芝2400 11人気 浜中俊 2:25.8 上り35.3映像
2 GII京都新聞杯 京都 芝2200 8人気 浜中俊 2:11.2 上り35.3
1 はなみずき賞 阪神 芝2000 1人気 福永祐一 2:03.0 上り33.8
3 OP若葉S 阪神 芝2000 3人気 M.デムーロ 2:01.8 上り35.9
1 3歳未勝利 京都 芝2000 1人気 C.デムーロ 2:02.1 上り35.4
4 2歳未勝利 京都 芝1800 1人気 M.デムーロ 1:50.2 上り35.0
2 2歳未勝利 京都 芝1800 1人気 M.デムーロ 1:47.5 上り33.6
5 2歳新馬 京都 芝2000 1人気 福永祐一 2:02.6 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
サウンズオブアースの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ネオユニヴァースNeo UniverseサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ポインテッドパスPointed PathKris
Silken Way
ファーストバイオリンFirst ViolinDixieland BandNorthern Dancer
Mississippi Mud
Sunrise SymphonySecretariat
Wimbledon Star
STORY

旅程 — この馬の物語

2011年生まれの黒鹿毛の牡馬。父ネオユニヴァース、母ファーストバイオリン。

地球の音、という名

2011年4月12日、北海道千歳の社台ファームに生まれた黒鹿毛。父ネオユニヴァース、母ファーストバイオリン。母は米国産で、現地で18戦2勝を挙げてから日本へ渡ってきた牝馬である。 この一族には、音が住んでいる。母の名は「第一バイオリン」。のちに続く半弟・半妹たちには、クロイツェル、グローサーザール、バリオラージュ、ヴァイオリンソナタと、楽譜や演奏会場を思わせる名が並んだ。 さかのぼれば、その響きの出どころは別のところにある。4代母クリスエヴァートは1974年にアコーン、マザーグース、コーチングクラブアメリカンオークスを制したニューヨーク牝馬三冠馬で、名はテニス選手クリス・エバートから採られた。その娘がウィンブルドンスター、さらにその娘がサンライズシンフォニー。テニスの名を継いできた牝系が、ある代からそっと音楽へ移り、母の代で第一バイオリンになった。 そして2011年の黒鹿毛に与えられたのは、楽器でも楽曲でもない名だった。サウンズオブアース——地球の音。馬主は吉田照哉、預けられたのは栗東の藤岡健一厩舎である。

一勝を、二度だけ

2013年10月13日、京都の芝2000m。福永祐一を背に1番人気に推されたデビュー戦は5着だった。11月に入って2戦、いずれも1番人気に支持されながら2着、4着。2歳のうちに勝ち上がることはできなかった。 年が明けた2014年2月22日、京都の3歳未勝利をクリスチャン・デムーロで制して初勝利。若葉ステークス3着を挟み、4月19日の阪神・はなみずき賞を福永で勝った。 生涯30戦のうち、彼が先頭でゴール板を過ぎたのは、この二度きりになる。 続く京都新聞杯はハギノハイブリッドの2着。賞金を積み上げて府中の第81回東京優駿へ駒を進めたが、11番人気で11着。勝ったのはワンアンドオンリーだった。この馬とは、秋にもう一度向き合うことになる。

半馬身 ― 淀の三千メートル

秋、阪神の神戸新聞杯で藤岡佑介が手綱を取った。この馬を管理する藤岡健一の長男である。8番人気の評価を覆し、ダービー馬ワンアンドオンリーとまったく同じ2分24秒4を刻んで、ハナ差の2着。府中で1秒2離された相手に、四か月足らずで鼻面まで並んだ。 10月26日、菊花賞。鞍上は蛯名正義、4番人気。好位の内を進んだトーホウジャッカルが直線入口で早々と抜け出し、後方から伸びたサウンズオブアースが最後まで詰め寄ったが、半馬身届かなかった。勝ち時計3分1秒0は、前年までのレースレコードを1秒7も塗り替える走りだった。 このとき3着に入っていたのが、3馬身半後方のゴールドアクター。その名は、一年後の暮れにもう一度立ちはだかる。

クビ差 ― 二〇一五年十二月二十七日

4歳。日経賞は1番人気で4着、京都の天皇賞(春)はゴールドシップが駆けた盾で9着。秋緒戦の京都大賞典でラブリーデイの2着に入り、ジャパンカップは5着。暮れの中山に、5番人気で立った。 第60回有馬記念。キタサンブラックがハナを切り、リアファル、ゴールドアクターがこれに続く。3番手を守っていたゴールドアクターは残り100mで前の2頭を捕らえ、追ってきたサウンズオブアースをクビ差だけ抑えて先にゴール板を通過した。走破時計は2分33秒0。時計のうえでは、二頭に差は無かった。 菊花賞で3馬身半後ろにいた馬が、一年でクビの分だけ前に出た。グランプリの勝ち馬と敗者を隔てたのは、写真判定に頼るほどの距離だった。

壁の名は、ゴールドアクターとキタサンブラック

2016年の日経賞、単勝1番人気。中山2500mで前にいたのは、またしてもゴールドアクターだった。0秒1差の2着。 5月の天皇賞(春)は15着に沈む。3分15秒3のコースレコードで春の盾を手にしたのはキタサンブラックで、以後この馬が壁になった。秋の京都大賞典はキタサンブラックの4着。11月27日のジャパンカップは、単騎で逃げたキタサンブラックが2分25秒8で押し切り、2馬身半差の2着がサウンズオブアースだった。有馬記念は8着。 これで重賞の2着は7回になった。京都新聞杯、神戸新聞杯、菊花賞、京都大賞典、有馬記念、日経賞、ジャパンカップ。勝ち鞍のほうは、未勝利とはなみずき賞のふたつのまま動かない。 いつしか彼は「最強の2勝馬」と呼ばれるようになる。皮肉ではなく、賛辞として。国際的なレーティングは2015年、2016年と続けて118ポンド。数字のうえでも、彼は間違いなく一線の馬だった。

メイダンの夜、札幌の四着

2017年3月25日、ドバイ・メイダン。クリストフ・ルメールを背に、7頭立てのドバイシーマクラシックへ。勝ったのはジャックホブス、サウンズオブアースは6着だった。海を渡ったのは、この一度きりである。 帰国初戦に選んだのは札幌記念。横山典弘と組んで4着に入り、洋芝の2000mが合うことを示した。だが秋は京都大賞典13着、ジャパンカップ12着、有馬記念7着と伸びない。その年の有馬を勝って去っていったのは、彼が何度も背中を追ったキタサンブラックだった。 7歳の2018年。目黒記念12着のあと、8月の札幌記念に藤岡佑介で臨む。13番人気という評価で、勝ったサングレーザーとの差は0秒1の4着。二年続けて、同じ舞台で同じ着順に届いた。 毎日王冠9着。11月のジャパンカップは、アーモンドアイが2分20秒6という世界レコードを刻んだ日で、彼は14着だった。

最後の直線 ― 二〇一八年十二月二十三日

引退の舞台に選ばれたのは、中山の有馬記念だった。4年続けて出走し、これが4度目のグランプリになる。14番人気。稍重の中山を回って16着、勝ったのはブラストワンピースである。 鞍上は藤岡佑介だった。4年前の秋、阪神でこの馬をダービー馬の鼻面まで運んだ男が、最後の直線も一緒に走った。父が管理する厩舎の馬に、息子が乗って終わる。この一頭にとっては、それが最後の一日だった。 12月27日付で競走馬登録抹消。通算30戦2勝、獲得賞金4億6744万9000円。GIの2着が3回、重賞の2着が7回。数字の並びだけを見れば、あと半歩が届かなかった記録である。半歩の内訳は、ハナ、クビ、半馬身——いずれも、写真を引き伸ばして初めて分かる距離だった。

札幌へ ― 鳴り続ける音

種牡馬にはならなかった。競馬というブラッドスポーツの物差しでいえば、彼が後世に残せるのは血ではなく、走った記録のほうだけになった。 それでも馬の一生は続く。札幌市のモモセライディングファームに移り、乗馬として人を背に乗せる日々に入る。かつて淀の三千メートルをレコード決着で走った脚は、今度はゆっくり歩くことを覚えた。2023年2月13日、大腸炎のため死亡。12歳だった。 血のほうも、まったく途切れたわけではない。母ファーストバイオリンの腹からは半兄ドミニカン(Dominican)が出ており、2007年のキーンランド、当時GIだったブルーグラスステークスを勝って、ケンタッキーダービーの舞台にも立っている。海の向こうで頂点を掴んだ半兄と、日本で7度その半歩手前に立った半弟。同じ牝馬から出た二頭が、別々の大陸で別々の物語を書いた。 2026年2月28日、藤岡佑介が鞍を降りた。翌3月1日付で調教師免許が交付されている。あの日の最後の直線を知る男は、父と同じ側へ回った。 楽器の名を持たない馬だった。それでも、ゴール板の手前で幾度も鳴った音は、確かに誰かの耳に残っている。地球の音というのは、たぶんそういう鳴り方をする。

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